9−3−2 P波速度から他の物性値を推定する方法の検討

物性値相互の関連を取り扱う理論式で,よく用いられるものにGassmann(1951) 式がある。Gassmann式は圧密された粒状体において,空隙が水あるいは空気で満たされた場合の弾性波速度の変化を説明する理論式であるが,大阪平野の検層結果については既に松本他(1998)により適用性が検討されている。これによると,土粒子の密度や体積弾性率などのパラメーターに適当な値を与えることにより,P波速度から推定したS波速度および密度は観測結果と比較的良く一致したとされている。京都盆地においては堆積層の多くが大阪層群であることから,大阪平野の場合と同様に,松本らによる仮定をそのまま用いてGassmann式の適用性を検討した。

図9−9にKD−1孔およびKD−2孔ボーリングの検層結果と,Gassmann式を用いてP波速度からS波速度と密度を推定した結果を示す。KD−1孔における大阪層群は比較的細粒分の多い堆積物からなり,静穏な水域での堆積層であったことが推定できるのに対して,KD−2孔の大阪層群は礫質土が多く扇状地性の堆積物と推定され,両者の物性値は同一年代の堆積層でも大きく異なる。このように堆積状況の極端に異なる場合でも,P波速度から推定したS波速度および密度はそれぞれ測定値とよく一致する。以上より,京都盆地の堆積層でも大阪平野で用いられたパラメーターを使って,Gassmann式を適用したP波速度からのS波速度および密度の推定が可能であると判断した。

また図9−9の結果では基盤岩についてもP波速度から推定したS波速度および密度はそれぞれ測定値とよく一致することから,堆積層と同様にGassmann式を用いてP波速度から各物性値の推定を行っても問題がないことがわかった。