7−3 測定結果

地質構造の検討に重力異常のデータを用いる場合,各重力測定点に固有の状況を取り除いた重力のブーゲー異常を用いるのが一般的である。そこで,収集・測定された全データについて,共通した補正を行って,ブーゲー異常を求めた。

ブーゲー異常値は,測定値から地球潮汐の影響と重力計の経時変化を除去した重力値に対し,以下の各補正を加えて求められる。

@高度補正:測定点の標高による違い(地球中心からの距離)を補正する。

Aブーゲー補正:海水準から測定点までの岩盤の厚さの違いを補正する。

B正規重力の補正:地球の自転の影響が測定点の緯度により異なることを補正する。

C大気補正:用いる正規重力式により必要となる。

D地形補正:測定点周辺の山谷の影響の違いを補正する。

コンパイルされた重力データの重力値に上記の補正を施し,最終的なブーゲー異常値が得られるような補正条件を各々確認した。さらに,文献資料に関しても記載されている重力値に同様の補正を加えることで全データの統一を図っている。

ブーゲー異常を求めるまでの諸条件は以下のとおりである。

@高度補正に用いる重力勾配:0.3086mgal/m

Aブーゲー補正に用いる密度:2.65g/cm3

B正規重力式:1967年測地基準系,測点の緯度をψとして

   γ0 =978.03185(1+0.005278895sin2ψ+0.000023462sin4ψ)

C大気補正近似式:0.87−0.0965h(mgal),hは標高(上記の正規重力式では必要)

D地形補正の基礎データ:国土地理院50mメッシュ標高数値地図

上記のうち,@〜Cまでは各重力データに記載の緯度と標高で計算可能である。地形補正を含まないブーゲー異常値を単純ブーゲー異常と呼ぶ。コンパイル重力データには地形補正量がデータとして含まれるため,これをブーゲー異常値から差し引き,単純ブーゲー異常を求め,上記の条件で重力値から求めた単純ブーゲー異常と比較して条件の確認を行っている。

本調査における各測定点の位置および測定点番号は図7−2

に示すとおりであり,各測点の地理条件および絶対重力値を表7−2(1)〜(11)にまとめて示す。

表7−2−1  重力値一覧表

表7−2−2  重力値一覧表

表7−2−3  重力値一覧表

表7−2−4  重力値一覧表

表7−2−5  重力値一覧表

表7−2−6  重力値一覧表

表7−2−7  重力値一覧表

表7−2−8  重力値一覧表

表7−2−9  重力値一覧表

表7−2−10 重力値一覧表

表7−2−11 重力値一覧表

上記した方法で求めたブーゲー異常値をコンター図として表したものが図7−3である。表示した図画は,左下を原点(0,0)として表しており,その座標値は平面直角座標系第Y系における X=−135.000km,Y=−33.000 kmである。コンターは,赤色がマイナスのブーゲーを青色がプラスのブーゲー異常値を示す。なお,コンターは1mgal間隔でプロットしている。

このデータに反射法探査の基盤岩上面の深度の傾向に合うようにトレンド除去をかけて重力探査結果から推定される京都盆地全域の基盤岩深度を推定した。図7−4に反射法探査による基盤深度と重力探査によって推定された基盤岩深度を示す。また,図7−5に重力探査結果をもとに京都盆地全域において推定した基盤岩の分布標高図を示す。

基盤岩深度の補正は,反射法探査によって推定された基盤岩深度データのある部分では良い対応を示していると思われる。しかし,基盤岩深度に関する情報がほとんどない盆地南側部分では,図7−3に見られるようにブーゲー異常値が正であるにもかかわらず,基盤岩深度は0m以下を示しており,必ずしも充分な精度のある結果とはなっていない。重力探査によって盆地南部の基盤岩深度の推定精度を向上させるためには,この地域における正確な補正を行うための基準となる基盤岩深度を,反射法探査などによって求める必要がある思われる。