6−3 解析

P波は、起震点で生じた全ての波群のなかで最も早く受震点に到達する。従って、受震点における観測波形の揺れ初め(初動)はP波の直接波あるいは屈折波である。屈折法解析は、この初動をもとに地下のP波速度分布を推定する手法である。

各受震点の初動到達時刻を読み取り、これを受震距離を横軸にプロットしたものは走時曲線と呼ばれる。図6−2に黒線で本調査の走時曲線を示す。

この走時曲線を用いて、まず萩原の方法(1938,はぎとり法)で基盤岩上面のP波速度を推定した。図6−2に、この結果を赤線で示す。図で分かるように得られる結果は断片的で、この方法では走時曲線の与える情報を充分に利用出来ていない。

そこで、差分法による屈折波トモグラフィ−解析(1994,横田他)を試みた。これは地盤を格子状にモデル化し、波の伝播経路と到達時刻をP波速度分布を変化させながらシミュレーションして、計算走時と観測走時が一致するようなP波速度分布を求める手法である。この方法の手順は次の通りである。

イ. 観測波形よりP波の初動走時を読み取る。

ロ. 差分格子点に適当な初期速度分布値を与える。

ハ. アイコナ−ル法により、ある震源点で起震した場合の各格子点の初動走時を計算する。

ニ. 初動走時分布をもとに波線を求める。

ホ. 各波線の観測走時と計算走時の比を修正係数とし、波線周辺の格子点に記憶する。

ヘ. ハ.〜ホ.を全震源点についておこなう。

ト. 格子に配られた修正係数をもとに新たな速度分布を算出する。

チ. ハ.〜ト.を収束するまで繰り返す。

手法の原理は以上の通りであるが、本調査では屈折法解析のための震源点数が少ないため、基盤岩上の堆積層の速度分布を屈折法解析で全て決めるには情報量が足りない。そこで、堆積層の速度分布は反射法探査の速度解析結果を変化を許さないで与える事にした。ただし、反射法探査で推定した基盤岩より上部50mの堆積層速度は、速度解析結果がやや不確定のため自由に速度変化を許す事とする。

また表層部20〜30mも、表層静補正を行っているため、反射法速度解析の結果は実際の速度分布とは異なる場合がある。そこでこの区間も自由に速度変化を許す事とし、代わりに反射法探査記録(起震点間隔10m)の受震点距離300mまでの全ての初動走時を解析に加え、表層部に起因する走時の変化を解析で考慮できる様にした。

得られた推定P波速度分布を図6−3に示す。また図6−4に、この速度分布より求めた計算走時を観測走時と比較して示す。

図6−3の結果より、基盤岩速度は上面の風化部を除くと4Km/sec以上の値を示し、中・古生層の特徴と考えられるが場所による速度変化が大きい。全体の傾向は、測線南部は速度が速く、場所により5Km/secを越え、また上面の風化層厚も薄い。これに対して、測線北部は概ね4km/sec〜4.5Km/sec程度で、風化層厚も厚い傾向が見られる。

参考文献

1)田治米鏡二,”土木技術者のための弾性波による地盤調査法”,槇書店,1977

2)横田 裕・伊藤信一・香川敏幸,”アイコナール方程式を用いた波線追跡法とその応用  ”,物理探査学会第90回学術講演会講演論文集 1994