4−2 重力デ−タの整理

地質構造の検討に重力異常のデ−タを用いる場合、各重力測定点に固有の状況を取り除いた重力のブ−ゲ−異常を用いるのが一般的である。上記の各重力資料も最終的なブ−ゲ−異常まで、それぞれ求めたものとなっている。しかしながら、ブ−ゲ−異常にいたるまでの補正の条件については、各々のデ−タセットによって異なっていることが予想される。

このため、追加した2つの重力デ−タについては、コンパイル重力デ−タと共通の補正方法で再度ブ−ゲ−異常を求めるものとした。

ブ−ゲ−異常値は、測定値から地球朝夕の影響と重力計の経時変化を除去した重力値に対し以下の各補正を加えて、求められる。

@高度補正   :測定点の標高の違い(地球中心からの距離)を補正する。

Aブ−ゲ−補正 :海水準から測定点までの岩盤の厚さの違いを補正する。

B正規重力の補正:地球の自転の影響が測定点の緯度により異なることを補正する。

C大気補正   :用いる正規重力式により必要となる。

D地形補正   :測定点周辺の山谷の影響の違いを補正する。

コンパイル重力デ−タの重力値に上記の補正を施し、最終的なブ−ゲ−異常値が得られるような補正条件を各々確認した。次いで、追加した2つの重力デ−タに関しては資料に記載の重力値に同様の補正を加えることで全デ−タの統一を図った。

ブ−ゲ−異常を求めるまでの諸条件は以下の通りである。

@高度補正に用いる重力勾配;0.3086mgal/m

Aブ−ゲ−補正に用いる密度;2.65g/cm

B正規重力式;1967年測地基準系、測点の緯度をψとして

γ=978.03185(1+0.005278895sinψ+0.000023462sinψ)

C大気補正近似式; 0.87−0.0965h (mgal)、hは標高 (上記の正規重力式では必要)

D地形補正の基礎データ;国土地理院50mメッシュ標高数値地図

上記のうち、@からCまでは各重力デ−タに記載の緯度と標高で計算可能である。地形補正を含まないブーゲー異常値を単純ブーゲー異常と呼ぶ。コンパイル重力データには地形補正量がデータとして含まれるため、これをブーゲー異常値から差し引き、単純ブーゲー異常を求め、上記条件で重力値から求めた単純ブーゲー異常と比較して条件の確認を行った。図4−1に両者の比較を示す。

図4−1 重力データ整理方法の検証(正規重力、高度補正、ブーゲー補正、大気補正)

Dの地形補正については、測定点周辺の地形を五面体(メッシュを対角線で2分割し、底面には測定点と同じ標高、上面には各メッシュの標高を与える。)の集合で近似し、各々の五面体の測定点に対する寄与を計算し合計する方法により地形の影響を算出した。コンパイル重力デ−タにおける地形補正の方法は明らかではないが、各測定点の地形補正量は記述があるので、これらと上記の計算結果との比較を行った。図4−2に地形補正量の比較を示す。地形補正に関しては完全なトレースにはいたっていないが、線形の対応は得られているものと考えられる。

コンパイル重力データと地形補正量に開きのある横山らのデータと、地形補正量の記述がない伊藤らのデータに関しては上記の計算により地形補正量を算出した。

図4−2 重力データ整理方法の検討(地形補正)