2−2−4 測定結果

P波測線のノイズ状況を表す図(図8)を示す。時間的、空間的にノイズ環境が大きく異なる。特に、幹線道路上とその側道上の受振点では20dB以上の差があることが分かる.

図9−1図9−2図9−3図9−4図9−5に、P波観測の現場モニター記録例を示す。図では、人工震源(バイブレータ)から生成された弾性波を、地表に設置した240カ所の受振点で同時に観測した波形を並べて表示してある。横軸は受振点位置(展開長6km)、縦軸は弾性波の到達時間(往復走時時間、ミリ秒)に相当する。参考のために、地形図上に発震点・受振点をマークした測線図を対比した。

記録例では、表層基底層を伝播した初動屈折波(直線的な波の並び)および、それに続く反射波(双曲線的な波の並び)等が確認できる。初動屈折波の見かけの速度は約1.85 km/sで、場所による変化は認められない。垂直往復走時2.6〜3.0秒付近に、弱く現れている反射波は、本調査地域の基盤からの反射に相当すると考えられる。

この基盤深度以浅には、多数の連続する反射波が確認できる。これらは、第三紀または第四紀の堆積層に相当すると考えられる。基盤面以深には連続する強い反射面は確認できない。

取得記録の卓越周波数は、20〜30Hz程度であり、発振点による周波数成分の相違は認められない。すべての震源から表面波の発生が見られる。また、一部の記録(図9−2)では表面波に先行するかたちでチューブウェーブと呼ばれるノイズが混入した。これは、発振点、受震点の双方に水道管または下水管等の埋設管が存在する場合、この埋設管を伝播する波のことである。このようなチューブウェーブが存在する場合は、データ処理においてこれらを選択的に除去するフィルター処理が必要になる。なお、受振器を設置することができなかった地点が2点あった(川崎インターチェンジ付近)。

図9−6図9−7に、S波観測の現場モニター記録例を示す。図では、人工震源(P/S油圧インパクタ)から生成された弾性波を、地表に設置した100カ所の受振点で同時に観測した波形を並べて表示してある。

記録例では、表層からの初動、表層基底層を伝播した屈折波、および、それに続く反射波(双曲線的な波の並び)が確認できる。屈折波の見かけの速度は0.2〜0.4 km/sである。表面波は強い分散性がみられる。

往復走時2秒以下では、いくつかの連続する反射波が確認できる。これらは、基盤以浅の主に第四系からの反射によるものである。往復走時2秒以上では、有意なシグナルは見当たらず、5秒以降で出現が予想される基盤からの反射波は確認できない。

S波観測作業では、有意な反射波は、往復走時で2秒(深度約500m)付近まで捉えられた。P波大型バイブレータに比べて発震出力が小さいことにより、基盤を含む深部からのS波反射波は確認できなかった。しかし、当初計画通り、浅部のS波構造推定には十分なS/N比の記録が取得できた。