1−6 調査結果の概要

<反射法調査>

大型バイブロサイスによる反射法の結果については、尻手黒川線という幹線道路沿いであったことにより、高ノイズのため必ずしも良好とは言えないが、測線長約16 kmにわたり、先新第三系基盤の深度と形状およびその上部の堆積構造が明らかになった。

基盤深度は測線の東端、中原区井田で約3100 mであり、西方に向かって徐々に浅くなり中央部で傾斜が急になり、麻生区黒川付近で2500 m弱であった。

基盤上部の堆積層については、表層の低速度層を除くと浅部から基盤までの速度は約1.8 km/sから約3.5 km/sまで変化する。この地域の上総層群と三浦層群の境界は、深度約1500 mと考えられるが、この境界付近および三浦層群の中では、水平方向の速度変化が大きく、不整合を示すパターンが見られ、また麻生区上麻生の付近では、凸状のアノマリーが認められる。

<屈折法調査>

反射法の受振器展開を利用した超高密度・多大チャネルの屈折法は、データの信頼度の点で有効であった。

バイブロサイス5台の約100重合による夜間発振で、震源距離約20 kmまでの初動屈折波の検出ができ、基盤のP波速度が求められた。但し、黒川地点での発振は、地表地質の悪条件のせいか、減衰が大きかった。

レイトレーシング法およびタイムターム法による解析結果では、基盤の速度は約5.2 km/sとなった。

<S波スポット反射法調査>

P/S波油圧インパクタを震源とし、3成分地震計を用いて500 mの測線で実施され、深度500 m までのS波の速度が得られた。

交通ノイズが大きく、深部(700m以深)のデータは得られなかった。

<既存ボーリングデータによるP/S波速度>

反射測線の西端の北約5 kmの地点の府中地殻活動観測井(約2780 m)における、油圧インパクタ震源・3成分孔内地震計によるVSPデータから、P/S波の垂直方向の速度が精度よく求められている。

その結果、地表から基盤(四万十帯と考えられている)までのP波速度は、地表から約100 mまでの低速度域を除くと、約1.7〜約3.1 km/sまで増加し、基盤岩では平均4.9 km/sの速度であった。また、S波速度については地下100 mから基盤までは、約0.5から約1.4 km/sまで増加している。

VSPのデータから求めた深度に対するVp/Vs比は、地表近くで4.5以上を示し、急速に減少して深度約400 mから基盤までは、2.5から2.0の間になる。基盤岩中では平均1.7となる。VpとVsの関係については、基盤岩上の堆積層について、Vp約1.7 km/s以上の領域では直線的な関係が顕著であり、回帰式として、Vs=0.8Vp−0.8(1.7 km/s