1−2 調査の目的

本業務は、神奈川県西部地域にあたる足柄平野周辺の地下構造を解明し、地震防災対策に必要な基礎資料を得るために実施したものである。

兵庫県南部地震においては、直接的な活断層の動きとは別に、人口の密集した堆積平野において、特定の帯状の場所で被害が集中した。これは、地震に伴う地盤の揺れが、基盤の深さ・形状・地震波速度、および、基盤上位の堆積層の地震波速度に大きく影響していることに起因したと考えられている。ここで言う基盤(地震基盤)とは、S波の速度で約3km/s以上、P波の速度で約5km/s以上の花崗岩や中・古生層などの硬岩を意味する。従って、都市部を含む堆積平野において、上記のような深部(関東平野では3000m以上にも及ぶ)までの構造調査を行ない地盤資料を広域的に得ることは、地震動(地震時のゆれの大きさ)の予測、被害想定図の作成など地震防災計画策定のために重要である。

これまでに、神奈川県東部においては、平成10から12年度に実施された地下構造調査の結果、深度3000mを超える基盤までの地質構造形態、速度構造形態等が明らかとなった(横浜市、1999:横浜市、2000:横浜市、2001:川崎市、1999:川崎市、2000:川崎市、2001:神奈川県、2000:神奈川県、2001)。平成13年度神奈川県地下構造調査では、横浜市、川崎市の調査結果を含めて総合的な解析を行い、神奈川県東部地域の地下構造を明らかにし、その結果について検証している。

一方、神奈川県全域の地下構造の把握を考えた場合、県中部から西部に至る地域については、調査密度が低いために基盤形状等についての信頼性が高いとは言えない。県西部は県東部と比較して基盤までの深度が浅く、特に丹沢山地や箱根山において堆積平野と山地の境界部があるため、境界形状によっては、盆地生成表面波による干渉、フォーカシング効果といった特有の波動現象により地震動が増幅される可能性がある。さらに、この地域ではM7クラスの小田原地震の発生が指摘され(石橋、1999)、平野を取り囲む神縄断層・国府津−松田断層には海域部も含めてM8クラスの地震が想定されている(地震調査研究推進本部地震調査委員会、1997)。よって、この地域の地下構造の把握は、プレート境界域の構造把握という地学上の興味に加え,正確な強震動予測や防災上の観点からも重要である。

以上から、神奈川県西部の広域的な速度構造、および、盆地端部を含めた地下構造を把握するために、国府津−松田断層帯および足柄平野周辺を対象地域とした反射法地震探査を実施する。