7−1−2 解析結果

座標系は平面直角座標系(\系)とし、x軸を北向き、y軸を東向きにとるものとする。解析領域は、−94km≦x≦−34km、−78km≦y≦+2kmの60km×80kmの範囲で、2km×2kmのセルに分割した。したがって、全セル数は30×40=1,200である。

解析対象とした起振点・受振点の分布図を図7−1に示す。観測走時データの選択にあたっては、a〜g測線における2次元屈折法解析結果を考慮し、P波速度4.3km/s以上の速度層を伝播したと考えられる屈折波の初動走時データを採用した。したがって、P波速度5.5km/sを有する速度層を伝播した屈折波の初動走時データも含まれている。波線分布図を図7−2に示す。起振点数39、受振点数1,344で、観測走時数は2,967である。

インバージョンにおいては、26起振点(夢の島18点、東扇島、岡津、黒川、大黒、舞岡、多摩川2点、逗子)のタイムターム値を固定するとともに、速度値を5.15±0.40km/sの範囲内に制限し、波線を直線波線とした。

インバージョンの結果得られた速度およびタイムターム分布図を図7−3に示す。また、速度およびタイムタームを、最適化原理に基づく方法により2次元補間した結果を図7−4に示す。起振点あるいは受振点が半径5km以内にないグリッド点は未決点とした。走時のRMS残差は、補間前で0.069s、補間後で0.135sである。

表層速度値を嶋(1990)やKoketsu and Higashi(1992)と同様に2.3km/sと仮定した場合の基盤深度分布図を図7−5に示す。基盤深度は、図7−4に示した2次元補間後の速度およびタイムタームから、

式7−9

を用いて計算した。ただしここに、V1 、V2 はそれぞれ表層、基盤の速度、r はタイムタームである。

図7−5の基盤深度分布図を見ると、横浜市において実施された反射法地震探査で明らかにされた横浜市北西部の段差構造が現れていない。第6章の横浜市および川崎市の探査結果との整合解析において述べたように、屈折法地震探査の解析測線であるg測線において、黒川−岡津間の5.1km/s層上面に段差を与えても観測走時を説明できることから、段差構造を入れた解析結果を最終的に採用した。

そこで、横浜市北西部に段差構造があることを事前情報として加味し、タイムターム法の再解析を行った。実際には、横浜市および川崎市の反射法地震探査結果を考慮し、−50km≦x≦−46km、−34km≦y≦−26kmの範囲内にあるセルのタイムターム値を固定してインバージョンを実施した。その他の計算条件は、前の解析と同一である。

再解析の結果得られた速度およびタイムターム分布図を図7−6に、2次元補間した結果を図7−7に示す。走時のRMS残差は、補間前で0.078s、補間後で0.143sであり、タイムターム値を固定しない結果よりも若干残差が大きくなっている。

また、表層速度値を2.3km/sと仮定した場合の基盤深度分布図を図7−8に示す。