6−2 解析結果

図6−3図6−4にb測線およびg測線それぞれのレイトレーシングによる再解析結果を示す。また、再解析結果の反射法地震探査結果との比較を図6−5に、屈折法地震探査測線間の比較を図6−6に、微動アレー探査結果(S波速度構造)との比較を図6−7に示す。

B測線については、交差する反射法地震探査測線だけでなく他の屈折法地震探査測線の構造も考慮して、堆積層を2層から3層構造に修正した。G測線は、屈折法地震探査の観測点密度が粗かったために通常の屈折法解析では基盤の段差構造を推定できなかったが、反射法地震探査による段差構造を入れても観測走時を満足する構造を得ることができた。その結果、図6−5および図6−6に示すように各屈折法地震探査測線の速度構造は、他の反射法あるいは屈折法地震探査測線との交差位置での層境界がほぼ一致する構造を得ることができた。微動アレー探査結果(S波速度構造)とは、S波速度(Vs)0.6〜1.2km/s層がP波速度(Vp)1.5〜2.3km/s層に、Vs1.2〜2.0km/s層がVp2.8〜3.1km/s層にほぼ対応する構造となっている。

屈折法地震探査結果および反射法地震探査結果を考慮した整合解析により得られた神奈川県全域における大局的なP波速度構造を表6−2に示す。表には、周辺の地質分布、深部ボーリングによる速度検層データ、層序データから、各速度層に対応する地質(地層区分)を併記した。第4速度層(4.7〜5.2km/s層)は全解析測線に共通に現れており、当調査地域における基盤層と考えられる。ただし、測線長の長い測線においては、この速度層の下位に5.5km/s相当の速度値を示す第5速度層が認められる。

表6−2 神奈川県地域の大局的なP波速度層と地質

深部ボ−リング、反射法地震探査、屈折法地震探査により得られているP波速度層を、表6−3にまとめた。深部ボーリング、反射法地震探査の結果は地域的に限定された箇所での結果であるが、各種探査による結果からP波速度値においてはほぼ整合性が認められる。

表6−3 各種探査法によるP波速度層の速度値(単位:km/s)

整合性解析から各結果を比較すると、基盤速度に関して、屈折法による結果は広域な基盤速度の平均値を与えているが、検層結果は点の情報である。また、反射法で基盤速度を決めることは難しい。中間層の決定精度は、深部ボーリング>反射法>屈折法の順となる。屈折法における中間層の速度は各測線(神奈川県中部〜東部)に見られる速度値を示したものであり、検層結果(府中、横浜、江東)は各地点での速度値を示している。検層結果から、中間層は深度と共に速度が増加する傾向にある。特に府中VSPの結果(図4−1−4参照)からは、大まかに

深度  0.05 〜 0.25 km : Vp = 1.50+1.71×Z    ただし、

深度  0.25 〜 1.40 km : Vp = 1.80+0.47×Z     Vp(P波速度、km/s)

深度  1.40 〜 1.90 km : Vp = 1.60+0.81×Z      Z(深度、km)

の関係が得られる。反射法による速度解析結果(図4−3−4参照)でも中間層の速度は深度とともに増加する傾向にある。基盤上位の堆積層(中間層)の速度は、深度(地圧)とともに増加する傾向にあり、屈折法で得られた第1、2、3層の速度値は、各測線(各地域)により中間層の層厚や深度を反映したものと想定される。

整合性解析では、屈折法の個々の走時曲線でブラインド層となる中間層も、交差する他の測線や、他の探査結果による整合解析を行うことにより、屈折法の精度を向上させることができた。