0 はじめに

1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災では、神戸市街地を中心に多くの犠牲者が発生し、改めて大都市直下の地震の恐ろしさを認識させられました。

この震災では、神戸市街地を中心として東西に延びる狭い範囲に震度7の地域が分布するという、いわゆる「震災の帯」が発生しました。この原因の一つとして、神戸地域の地下構造の3次元形状が挙げられ、より深部の地下構造の実態解明が重要であることが改めて指摘されました。

人口が集中する我が国の都市部は、一般的に大規模な平野や盆地などの堆積平野に位置するため、国においては、その地下構造調査を進めていくことが急務であるとの認識のもとに、調査の全国展開に先立ち、当面、地域ごとの調査条件を考慮した合理的かつ効率的な探査方法の組み合わせを確認することを優先課題として、関東平野など3つの地域をテストフィールドとして選定し、平成10年度〜12年度までの3か年事業により、地震関係基礎調査交付金を地方自治体に交付し調査を実施していくこととしました。

本県では、横浜市、川崎市との共同調査としてこの地下構造調査に着手し、平成11年度には具体的な現地調査として、火薬を使った屈折法探査を実施しました。

共同調査の役割分担としては、県は横浜、川崎両市を含む県東部の広域的な調査を分担し、横浜市、川崎市は、震源車を使った反射法探査などにより市内を中心に詳細調査を実施しました。

調査は、科学的適正を期し、専門的、技術的観点から助言及び調査結果の評価を行うため、地下構造に関する専門家6名からなる「神奈川県地下構造調査委員会」(委員長 嶋 悦三東京大学名誉教授)を設置して進めてまいりました。また、横浜市、川崎市の地下構造調査委員会との相互調整を図るとともに、神奈川県東部地域全体の解析を進めるために「神奈川県・横浜市・川崎市地下構造調査合同委員会」(委員長 嶋 悦三東京大学名誉教授)を併せて設置して進めてまいりました。

本報告書は、この2か年に神奈川県で実施してきたものに横浜市、川崎市の調査結果を含めて総合的な解析を行い、神奈川県東部地域の地下構造を明らかにし、さらに、その結果について検証したものとなっております。

最後に、この調査を実施するに当たっては、神奈川県地下構造調査委員会はもとより、現地調査地域の地権者の方々、河川管理者、自治会、公園管理者、学校関係者、道路管理者、ライフライン事業者、鉄道事業者など多くの関係機関各位のご協力により進めることができました。また、総合解析においては、防災科学技術研究所のK−NETデータ及び横浜市高密度強震計ネットワークデータを使用させていただきました。嶋委員長をはじめ、各委員、関係者の皆様のご尽力に深く感謝の意を表します。

平成13年3月

                             神奈川県防災局防災消防課