3−1−7 千葉県の地震動の地域特性

千葉県における地震動の特徴について、今回作成した地下構造モデルおよび、実際に観測された強震観測記録を基にして、2〜12秒のやや長周期帯を対象に考察した。

・ 三次元モデルの一次元近似による計算結果では、市原市を中心とする地域で、深部地盤に対する固有周期が11秒と非常に長くなる。地盤の固有周期のコンター図は、酒井ほか(2005)による千葉県及び周辺地域で観測された2004年9月5日紀伊半島南東沖地震のやや長周期地震動(12秒の速度応答値)の等値線図と比較的類似している。

・ 千葉県中央部地域の臨海部では、周期2秒以上のやや長周期帯域で地震動が増大し、揺れが長く続いているという観測結果と、それを説明する三次元シミュレーション結果が得られた。揺れの性質を検討した結果、下総層群、上総層群等の上部堆積構造が大きく影響し(図49−1図49−2)、東京湾北部に向かって四方から地震波が回り込んでくる結果、揺れが増大し長く継続すると考えられる。

・ 伊豆諸島付近を震源とする地震は、地震波が千葉県地域に到達したとき、ほぼ全域で地震波の周期10秒のスペクトル成分が卓越する。これと、地下構造による固有周期を考え合わせると、市原市付近では固有周期10〜11秒の波がさらに増幅・卓越することになる。

・ 千葉県直下の地震の三次元シミュレーション結果では、君津市の内陸部を中心とする地域(富津市から市原市にかけて)で周期1〜3秒の地震動が増大しているのが確認できる。この地域は、沖積平野と洪積台地の境界付近であり、また、上部堆積層が急傾斜している地域である。これ以外にも、千葉県内陸部で断層等による堆積層や基盤岩深度の急変部を反映して局所的に地震動の増幅が認められるが、これらの増幅率は概ね2倍未満であり顕著ではない。これらの成因について、速度構造が急変する付近で地震波が重なり合い、地震動が増大するものと推定される。ただし、観測点が十分でなく、観測結果からは明瞭ではない。また、地震波の増幅効果は、震源からの放射パターンや到来方向によっても変わると考えられる。

・ 千葉県中央部地域の深部地盤に複数の断層や起伏が確認されたが、やや長周期帯域の地震動に影響を与えるほど規模は大きくないとみられる。局所的に地震動が強くなっている地域は見られるが、その増幅の度合いは顕著ではない。兵庫県南部地震で甚大な被害を受けた帯状の地域(いわゆる「震災の帯」)が、盆地端部の局所地域に地震波が重なり合った結果(盆地端部効果)であると言われているが、今回の調査対象地域である千葉県西部および中央部地域では、同じメカニズムで「震災の帯」を発生させるような地下構造の性状は認められない。三次元シミュレーションにおいても、盆地端部効果に相当する増幅は見られなかった。