(3)一次元解析による修正

一次元解析では、基盤岩中もしくは深度2000m程度まで掘削されたKiK−netの坑底および地表の地震計の観測波形を基盤入射波形として用いている。

基盤入射波形は、基盤岩の地質や入射方向などが調査地域内でもある程度異なっていると考えられるため、その計算には、千葉県中央部地域を5つのブロックにわけ、各ブロックの中のKiK−Net(地中地震計)を基準観測点として使用した(図27)。

基盤岩中に地震計のある基準観測点(下総、成田)では基盤岩中の観測波形から解放基盤上面での理論波形を計算し、基盤岩まで掘り込まれていない基準観測点(千葉、富津、養老)では堆積層中の観測波形を地表の観測波形と比較したうえ、解放基盤上面の理論入力波形を計算し、それぞれのブロックごとの入力波形とした。

S波多重反射理論に基づく線型地盤応答解析により、各観測地点における理論波形・フーリエスペクトル・増幅スペクトルの計算を行い、観測波形から求められる結果と比較することにより、モデルを検証した。

この作業では、モデルの地層境界の深度は固定し、観測波形と理論波形が一致するように、S波速度・Q値の微調整を行った。また、一次元解析では、作成したモデルの構造に加えて表層部分にPS検層で求められている低速度層(S波速度0−15〜0−2km/s、Q値5〜20)を加えた。

一次元解析では、解放基盤への入力波形を基に波形の計算を行うため、基盤より下位の物性値は扱わない。

一次元解析による微調整の結果、基本的な値は平成15年度と変わらず、三浦層群相当層・保田層群相当層のS波速度とQ値を修正した。

堆積層中(E面まで)のQ値については、一次元解析における波形合わせの過程で周波数依存性(周波数の1−0乗に比例)を取り込み、代表値として1Hzにおける値を決定した。

地震基盤より下位の物性値(イタリックで示す)は、既存文献を参考にして追加して与えた。

表3−1−4

上記のように、今回の三次元モデルでは最も地表に近い地層のS波速度を0−5km/sとしており、これより遅い表層地盤(沖積層)はモデルに含まれていない。

平成12年度の総合解析では、浦安観測点での一次元シミュレーションにおいて、4層モデルのシミュレーションに加えて、ボーリングの標準貫入試験結果をS波速度に換算し、表層部に2層の低速度層がある場合のシミュレーションを行った。N値から換算した表層低速度層を加えることにより、シミュレーションでは1Hz付近の振幅スペクトルがより観測値に近づく結果が得られている。なお、この表層低速度層を付加することにより、スペクトル上ではおよそ0−5Hzより高い周波数帯域に違いが見られた。

このように、表層部の低速度層は地震動の増幅については無視できない影響を及ぼすため、実際の想定地震における強震動予測に際しては、適切に表層の情報を付加することが必要と考えられる。