(4)上総層群(マーカーB〜C)

千葉県西部地域における上総層群上面の深度は、船橋市付近で周辺地域よりやや深く深度約500mとなり、周辺地域との深度差は250m程度である。地震波の集中が問題となるような構造ではない。

反射法地震探査による上総層群の速度は、2−0〜2−5km/sであった。

屈折法地震探査の解析結果では、速度層の境界である屈折面は、県西部地域の一部では反射法地震探査で解釈された上総層群上面(マーカーB)に対応する明瞭な屈折波が確認されなかった。明瞭な屈折波が出ている屈折面(マーカーb')は地質境界面より150m程度下位に位置する。屈折面と地質境界面が一致しない原因は、明らかにすることはできなかった。県中央部地域では、このような不一致はなかった。

上総層群上面の屈折波速度は、2−0〜2−1km/sであった。

千葉県中央部地域では上総層群中に、連続する反射面が数多く確認される。平成13・14年度の測線では、連続する強い反射面のうち上位の反射面が斜交し消滅する反射面をする連続した反射面を三浦層群相当層上面として解釈していた(マーカーb'')が、平成15年度の調査結果と海上保安庁の東京湾音波探査データを経由した江東深層地殻活動観測井の結果から、この反射面は上総層群中の連続する反射面であると修正した。この反射面は、県西部地域でも確認され連続する。

 マーカーbについては、平成13・14年度の測線で下位の反射面を緩い角度で斜交して削っているが、さらにマーカーBに斜交して削られる。平成15年度の測線では、マーカーbは下位の地層をわずかに削るが、マーカーBに大きく削り込まれる。これまでマーカーbは、千葉市付近で下位の反射面を緩い角度で斜交して削ることや、確認されている深度から「東京湾不整合」として、上総層群と下総層群の境界としていた。

当初、上総層群の上面はマーカーBのない地域ではマーカーb、マーカーBがマーカーbを削る地域はマーカーBとしていた。今回は、反射面からみた地層の堆積構造が、マーカーBを境に大きく変化することや速度コントラストの大きく物性値の境界となっていることから、マーカーBを上総層群の上面として統一した。

県中央部地域のマーカーBを地層境界とする上総層群のP波速度は、県西部地域とほぼ同じく2−0〜2−4km/sと求められた。

マーカーBの深度は、中央部の袖ヶ浦市(図57、CDP−1300付近)で約650mと最も深く、調査地域全体で300〜600mの深度である。平成15年度測線の東端(市原市鶴舞付近)では、この境界が地表に露出する。形状は、市原市〜袖ヶ浦市の沖合を中心とするやや北東方向に盆状構造である。

上総層群の層厚は、市原市鶴舞付近では最大2200mを超える。その他の調査地域でも、1000m程度の層厚がある。

 マーカーBとbの間の地層は、堆積後、南西部が隆起して削剥されたと考えられ、袖ヶ浦市より南の地域では、マーカーbが削剥され分布していない。また、東京湾中央より西側では分布しないと考えられる。