(5)文献調査

文献調査により、主として調査地域の地質情報、調査地域周辺で実施された反射法地震探査の情報が、断面図の解釈を進めていく上で重要な資料となった。

地質情報としては、既存の地質図等の他には、防災科学技術研究所などによる深層ボーリング坑井が千葉県内にも何本か掘削されていることがあり、その地質情報を手がかりとして解釈を行った。また、これらの坑井では、強震観測のデータが公開されており、シミュレーションにはそのデータを活用している。

特に重要な情報源となったのは、独立行政法人 防災科学技術研究所の「下総深層地殻活動観測井」(鈴木ほか,1983)である。三波川帯の基盤岩までの地質情報、検層・VSPによるP波速度、VSPの変換波によるS波速度が分かっている。また、地表及び基盤岩中に地震計が設置され、その観測地震波形が利用可能なことから、西部地域および中央部地域での一次元地震動シミュレーションにおける基準点となった。千葉県の調査では、この観測井を通る反射法地震探査および屈折法地震探査を実施し、またこの点を中心とする微動アレー探査を実施している。

千葉県および周辺地域の深層ボーリングに関しては、防災科学技術研究所の深層地殻活動観測井「江東深層地殻活動観測井」(鈴木,1996)・「船橋FR−18」(福田ほか,1974)・「船橋地盤沈下観測井」(楡井,1972)・「八街R−2」(河合,1961)が、基盤岩まで掘り抜いている。これらの坑井より南側の房総半島では、2000m以上掘削されている坑井はあるものの、基盤岩は確認していない。今回、大深度・中深度ボーリングによるPS検層データを利用したKiK−Net観測点は下記の通りである。

・ 「下総深層地殻活動観測井」(鈴木,1983、山水,1999)

・ 「成田地殻活動観測井」(鈴木,2002、防災科学技術研究所ホームページ)

・ 「千葉地殻活動観測井」(鈴木,2002、防災科学技術研究所ホームページ)

・ 「養老地殻活動観測井」(鈴木,2002、防災科学技術研究所ホームページ)

・ 「富津地殻活動観測井」(鈴木,2002、防災科学技術研究所ホームページ)

周辺の反射法地震探査として特に有用であったのは、海上保安庁による東京湾の二次元音波探査(加藤,1988)、石油公団(1998)による基礎物理探査「房総沖浅海域」、東京大学による大都市大震災軽減化特別プロジェクト「房総測線」(佐藤ほか,2003)・「東京湾岸測線」(佐藤ほか,2004)である。これらのデータは、本調査地域の周辺を補完するもの、あるいは周辺地域との解釈の整合性を取るために用いられた。

今回、データとして使用した測線は以下の通りである。

・ 千葉県地下構造調査測線(H10,H11,H12,H13,H14,H15)

・ 千葉県活断層調査測線(H9)

・ 神奈川県活断層調査(H12)

・ H8防災科学技術研究所測線(成田)

・ H10石油公団測線(房総半島沖)

・ S58海上保安庁水路部測線(東京湾)

・ H15千葉大学測線(長南町〜一宮町)

・ H14大都市大震災軽減化特別プロジェクト 房総測線

・ H15大都市大震災軽減化特別プロジェクト 東京湾測線