(4)調査手法の比較

これまで実施してきた各種調査手法の長所・短所をまとめると次のようになる。

表3−1−2−4

地下構造調査の主要目的としては、先新第三系基盤までのP波速度、S波速度および構造を捉えることである。

コントロールデータとして既存の坑井におけるVSP、 速度検層等の直接的データがあれば望ましい。P波速度からS波速度を導くデータとしても有用である。新たに坑井を掘削してデータを取得することは費用の点から難しいが、反射法断面図と地質区分を結びつけることは必要であり、場合によっては反射法の調査測線を既存坑井まで延長することが必要である。

先新第三系基盤上面までのP波速度および構造を捉えるための手法として、大型バイブロサイスによるP波反射法地震探査がもっとも有効であることが確認された。ただし、実施にあたっては以下の点に注意が必要である。

・探査対象深度に見あった震源エネルギー(バイブロサイスの台数・出力レベル・スイープ数)

・上記エネルギーで発震するための道路条件(広い車線、住宅から離れている、弱い埋設管や地下空洞がないこと、など)

・ノイズレベルの高い幹線道路をなるべく避ける受振測線の配置

・住宅地内での発震のための住民周知

基盤岩の速度は、一般には反射法によって求めることはできないが、反射法の機材を用いて、バイブロサイス震源によるP波屈折法を行うことにより、基盤岩の速度を求められることが分かった。単独で屈折法を実施すると多大な受振器展開のための費用がかかるが、屈折法を反射法と同時に実施することによる費用の削減にもつながっている。都市部においては、バイブロサイスの夜間集中発震が有効である。可能であれば50kg程度のダイナマイトの発震により、30km以上まで到達する屈折波を得ることができる。また、海上のエアガンの集中発震も同様に有効である。

 S波反射法・屈折法については、確実な成果が期待できないため、まだ研究段階にあると言える。ただし、P波の反射法・屈折法記録中に、変換S波と考えられる波が見られることがあり、この発生機構の究明を含めて、今後利用を検討していくことが必要である。

微動アレー調査については、人工震源の必要がないため市街地でも調査が可能であり、費用も安価であるという長所がある。一方、取得されたデータデータの利用にあたっては、微動単独の条件から最適な解を求めることは不可能で、近隣の坑井データ・地震探査データとの突き合わせが不可欠である。充分な吟味がなされれば、これらデータが欠けている部分の補間に用いることも妥当と考えられる。