(2)S波反射法/屈折法地震探査

(1)探査測線の配置

S波反射法は、S波の反射波を観測する唯一の方法であるが、震源のエネルギー、探査深度等に限界があるため、県西部地域でモデル的に実施した。千葉県西部地域には、下総深層地殻活動観測井があり、既存の反射法地震探査が未舗装の道路上で実施されていたため、同じ測線でS波震源を用いた調査を実施し、P波反射法断面図とS波反射法断面図を比較した。

S波の反射法探査は、表層付近のS波速度がP波と比べて遅いため、受振点間隔または発震点間隔(あるいはその両方)を短く設定する必要があり、千葉県の探査においても、受振点間隔は5〜12−5m、発震点間隔は10〜25mとした。

S波震源は、現時点ではP波震源に比べて出力エネルギーが劣るため、探査深度は最大1000mが目安となる。一般的にS波震源は地表を傷めるため、未舗装の道路での作業が望ましく、都市部での実施は難しい。

(2)千葉県西部地域での探査結果

平成10年度には、白井市の未舗装の道路上で油圧インパクタおよびS波ミニバイブを震源とする反射法探査を実施し、ミニバイブの探査深度はおよそ700mであった。同一測線で異なる震源で実施した結果は、S波ミニバイブの方が良い結果が得られているが、データ取得時のノイズ状況が若干異なるため、厳密な比較はできていない。

平成12年度には、江戸川河川敷で、P波バイブロサイスを震源とする変換S波屈折波の取得を試みた。平成11年度の測線で、後述のように変換S波が観測されたため、変換S波を確認する目的で実施したが、この発震点では変換S波の発生がほとんどみられなかった。

(3)P波発震による変換S波

県西部地域および中央部地域のP波バイブロサイスによる屈折法の発震の多くで、堆積層中の見かけ速度1km/s程度までの変換S波が確認できた。この波は発震点近傍では見かけ速度0−4km程度から、徐々に速くなっていくため、表面波とは考えにくい。また、変換S波の生成については、データがほとんど地表付近から取得されていることから、地表の極浅部、例えば表層の砂利とすぐ下の土などの境界で、P波からS波に変換している可能性が高い。

この変換S波により基盤のS波速度が求まる可能性が検討されたが、発震点の地下の地質状況に依存すると考えられ、現時点では一般的手法としては用いることは難しい。常に変換S波が観測されるわけではないが、P波反射法の記録中に変換S波が混在する可能性を認識しながら解析をするとともに、変換S波の解析法について研究を進めていくことも必要である。

変換S波の見られた屈折法記録の例を図51−1に示す。これは、平成10年度の3点の屈折記録を示したもので、図の赤い点線の部分に変換S波が見られる。変換S波の走時をオフセット距離で表示したものが図51−2の中図であり、これを水平多層構造として解析した結果が下図になる。下総深層地殻活動観測井のVSPの解析結果や、微動アレー探査の結果とは整合している。