(1)P波反射法/屈折法地震探査

(1)探査測線の配置

南関東地域の基盤岩上面深度は深いことが知られ、特に千葉県中央部地域では最も深いことが想定されていた。このような地域で、基盤岩を含めた地下構造を把握し、三次元地下構造モデルを作成するためには、

・経済性を考慮しつつも探査測線はできるだけ長くし、調査範囲をカバーする。

・各測線はできるだけ直交方向に交差させ、交点での探査結果の一致を確認する。

・既存坑井などコントロールポイントの近傍をとおる。

・バイブロサイスの発震可能な道路幅と直線性を有する、できるだけノイズの少ない道路がある。

などを考慮して測線を配することとした。

(1−1)県西部地域

県西部地域は、下総深層地殻活動観測井、江東深層地殻活動観測井、船橋地盤沈下観測井、流山NP−2など、地質状況や物性値等が確認されているボーリングが多く掘削され、さらに既存調査を合わせて、先新第三系基盤岩の構造の走向方向が西北西から東南東方向であること、東京湾に向かって基盤岩上面深度が深くなっていることなどが想定されている。平成9年度の活断層調査結果などの既存調査結果も活用して、浦安市から利根川に至る探査測線と、これにほぼ直交する印西市から江戸川までの探査測線を配した。また、基盤岩の構造と直交することや隣接地域との連続性等を考慮して江戸川沿いの測線を配した。

(1−2)県中央部地域

県中央部地域の基盤岩上面深度は4,000mを超え、その形状も市原市を中心とした盆状構造が想定されていた。また、やや長周期地震動の影響を考慮する必要のある石油備蓄タンクなどの長大構造物は、東京湾沿いに多数あり、基盤岩の盆状構造を正確に把握する必要があることから、既存物理探査測線を考慮して測線を配した。基盤岩までの地質状況が確認されているのは、調査地域北端の八街市のボーリング坑(八街R−2)だけであり、このボーリングから東京湾沿いに富津市まで延びる測線と、盆状構造の中心でほぼ直交する、市原市姉ヶ崎から市原市鶴舞までの測線を配した。

千葉市、市原市、富津市の2,000m級のボーリングでは堆積層中の地質状況等が把握されている。東京湾で海上保安庁が実施した音波探査の結果を経由することで、江東深層地殻活動観測井の地質データを反映させることとした。

(2)発震点および受振点

反射法地震探査の発震点・受振点間隔については、平成9年度に実施した活断層調査で得られたデータから、疑似的に発震点・受振点間隔を増減させた記録を検討し、調査目的、経済性を考慮して決定した。さらに調査を進めながら、それぞれの地域に適合した探査仕様とした。

屈折法地震探査の発震点については、より深部の速度構造を把握するために、測線端またはその延長上で、ダイナマイト、バイブロサイスの夜間発震、またはエアガンの集中発震の場所を確保することとした。

平成10年度より実施した反射法および屈折法地震探査の概要を以下の表に示す。

表3−1−2−2

都市部においても、非爆薬震源であるバイブロサイスを屈折法地震探査の震源として用いることが有効であることが確かめられた。また、都市部周辺でも場所を注意深く選べは、ダイナマイトの発震が可能で、かつ有効であることが確認された。受振点については、反射法地震探査の資機材をそのまま活用することで、稠密なデータを取得することができた。海域においても、エアガン発震と海底受振器を用いた反射法地震探査・集中発震による屈折法地震探査が有効であった。エアガン発震船の制約により水深およそ20m未満の浅海域では、発震は行えなかったものの、陸上発震−海上受振、海上発震−陸上受振の記録を組み合わせることにより、海陸で連続する記録を得ることができた。

(3)成果と問題点

県西部地域の反射法地震探査では、ほぼ全ての調査測線で先新第三系基盤岩上面までの反射波が得られた。

平成11年度測線の松戸市内(二十世紀が丘)では道路下に導水管があり、この区間での反射法記録は良好ではなかった。

県中央部地域の反射法地震探査では、保田層群相当層が分布する地域ではほぼ保田層群相当層上面まで、それ以外の地域では基盤岩上面までの反射波が得られた。

浅海域での受振は、水深10m以上の区間ではハイドロフォンによる海底ケーブルを、水深の浅い海岸付近一部区間ではジオフォンによるシステムを用いた。海岸の干満の影響を受ける地域での受振についてはノイズレベルが高く、今後データ取得方法を改善していく必要がある。

屈折法地震探査におけるP波屈折初動の最大到達距離は、震源毎に次のようにまとめられる。

バイブロサイス夜間集中発震 12〜25km

ダイナマイト夜間発震 30〜35km

エアガン集中発震(昼間)(*) 22〜30km

 (*)エアガンの集中発震は、作業の安全性から昼間に実施

屈折法による解析に必要なオフセット距離は対象層の深度の4〜5倍程度が目安である。千葉県西部地域では、基盤深度2500mに対して、バイブロサイスの夜間集中発震により十分なオフセット距離(12km以上)の屈折波が取得された。また、千葉県中央部のダイナマイト発震では、測線端までのほぼ30kmのオフセット距離のデータが取得されており、基盤深度が6000mとしても十分な距離である。県中央部のバイブロサイス夜間集中発震でも、オフセット距離は十分でないものもあるが、全記録で基盤岩の屈折波が確認されている。

県西部地域では、屈折法の遠隔発震点として東京都の中央防波堤でバイブロサイス4台による夜間発震を行い、受振点のない海域の地下構造も推定した。

 解析には、受振測線の屈曲を考慮する必要があり、タイムターム法、オフセット距離と走時を直線に投影したレイトレーシング法、はぎ取り法を試み、整合性のある結果が得られた。