3−1−1 調査の背景

平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災は、約6400名の死者を出し、10万棟を超える建物が全壊するという戦後最大の被害をもたらすとともに、我が国の地震防災対策に関する多くの課題を浮き彫りにした。

これらの課題を踏まえ、平成7年7月、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、地震防災対策特別措置法が施行され、国の調査研究を一元的に推進する地震調査研究推進本部が総理府(現:文部科学省)に設置された。

地震調査研究推進本部は基盤的調査観測計画を定め、地方公共団体は科学技術庁(現:文部科学省)の交付金(地震関係基礎調査交付金)を活用して、平成7年度から16年度にかけて、活断層と堆積平野の地下構造を調査することになった。

千葉県では、平成9年度に東京湾北縁断層に関する活断層調査として、千葉市内および船橋市内で反射法地震探査を実施し、その後の地下構造調査の出発点となった。

千葉県西部地域は、千葉市・船橋市・市川市・松戸市・浦安市等の人口の稠密な大都市を含み、地震発生時の地震動予測は減災のためにも重要である。この地域には、既存データとして地震基盤まで掘削した深層ボーリングデータがいくつかある。調査地域のほぼ中央部(沼南町)にある防災科学技術研究所の下総深層地殻活動観測井や、調査地域の西南(東京都江東区)にある江東深層地殻活動観測井では、地質データや検層データが取得されている。この他に、船橋市・流山市・野田市等に基盤まで到達したボーリングデータがあり、地質状況が把握されている。

物理探査データとしては、地殻活動観測井のVSPや音波検層データ、下総観測井付近の反射法地震探査データなどとともに、平成9年の東京湾北縁断層に関する反射法地震探査データも貴重な資料となった。下総観測井は、地下構造調査を実施していく上での重要なコントロールポイントとなった。

県中央部地域では、基盤まで到達した深層ボーリングは、調査地域北端の八街市の坑井より南側にはない。八街市でのボーリングによる基盤深度は約2000mであることと、重力(ブーゲー異常)や既存の屈折法地震探査のデータから、県中央部地域での基盤岩上面の深度は4000mを超えることが予想されていた。

当地域で、基盤岩まで到達しないものの深度2000mまで掘削された坑井として、防災科学技術研究所の富津地殻活動観測井、千葉地殻活動観測井、養老地殻活動観測井などがあり、それぞれVSP調査も実施されており、三浦層群相当層より上位の地質構造を解析していく上で、重要なコントロールポイントとなった。

平成16年度には現場作業は実施せず、これまでに集積したデータを統合し千葉県全域にわたる三次元速度構造基礎モデルを作成し、その主要部分について地震動シミュレーョンを実施することにより、その基礎モデルを修正し、モデルを検証した。モデルの検証のために、一次元および三次元のシミュレーションを実施した。

モデルの作成では、想定地震による地震動シミュレーションに適した三次元速度モデルを作成することを目的とした。ただし、地域性の大きな表層部分(S波速度がおよぞ0−5km/s以下、周期2秒以上)は、今回の地下構造調査の対象としていないため、今後の解析において、浅層ボーリング等のデータを活用して適宜補完しながら用いていくものとした。

以下、これまでに実施した各種データ取得、解析作業の内容についてまとめる。