2−4−2 地域における深部地盤の固有周期

解析地域内における深部地盤の固有周期について、地震波増幅特性から地盤の固有周期の分布を調べた結果、固有周期は、6秒から12秒の範囲にほぼ収まった。図46に、今回の速度構造モデルによる増幅スペクトルの1次ピーク周期分布を示す。当地域において固有周期が短い地域は、成田市を中心とする北部地域および勝浦市を中心とする南部地域で6〜7秒台を示している。一方、固有周期が長い地域は市原市を中心とする地域で11秒程度であり、基盤上面の入力振幅に対する地表のピーク増幅率は数倍程度である。このピーク周期は、関東地方の他の地域(東京都、神奈川県地域)と比較して極めて長いため、千葉県地域の地震動特性の大きな特徴である。特に、石油タンク等が多く存在する千葉市から袖ヶ浦市にかけての県中央部の東京湾岸地域では、地盤の固有周期が10秒を超えている。また、浦安市から木更津市にかけての東京湾沿岸地域で固有周期は8秒以上になっている。このような地域特性は、今後の地震防災対策の重要な参考資料となる。なお、地盤の固有周期のコンター図は、酒井ほか(2005)による千葉県及び周辺地域で観測された2004 年9 月5 日紀伊半島南東沖地震のやや長周期地震動(12秒EW成分速度応答)の等値線図と類似しており(図47)、今回作成した地下構造モデルにより観測事実が再現できていると評価できる。

 県中央部地域の深部地盤による固有周期のコンターと、特徴的な長周期の増幅特性について検討した。図48は、地域における深部地盤の固有周期と堆積地盤との関係を示す。今回、1次元線型地盤応答から求められた堆積層の1次ピーク周期分布を(d)に示し、(a)は基盤上面深度、(b)は基盤上面から地表までの堆積層の平均S波速度、cは基盤上面から地表までの垂直S波走時を示している。(b)を見ると、保田層群相当層や三浦層群相当層が厚く堆積する調査地域の中央部から南部にかけて、堆積層の平均S波速度が大きくなっており、その結果、基盤深度が深い南部地域(君津市、鋸南町、など)における垂直S波走時(地表〜基盤上面)は相対的に小さくなっている。この垂直S波走時に定率をかけたものが堆積層の第1ピーク周期と近似されるため(例えば、1/4波長則と近似すると4倍)、cと(d)のコンターの形状はよく似ている。結果的に、第1ピーク周期の最大地点は、基盤の最も落ち込んでいる位置よりも北側にシフトしている。