(1)2003/10/15の地震(Mj5−1)による検証

2003年10月l5日の地震は、千葉市直下の深さ74kmで発生した地震であり、そのメカニズムは南北方向に圧縮軸を有するスラスト型である。圧縮軸の方向は太平洋プレートとフィリピン海プレートの相対運動方向と一致していると考えられており、太平洋プレート上面で発生する地震活動の一つと考えられる。

この地震は、防災科学技術研究所(K−net、KiK−net)、千葉県の強震観測網により多数の観測点で波形記録が得られている。千葉県地域を南北方向に縦断するように、データの品質が比較的良好な計12点の強震観測点を選んで、これらの観測波形を中心に検証を行った。図2に、使用した強震動観測点位置を示す。表7に、気象庁による地震の震源情報、表8に、防災科学技術研究所、広帯域地震観測網による地震のメカニズム解を示した。

モデルにより合成された波形・スペクトルの比較結果を、図34−1に示す。いずれも、観測結果を黒色、合成結果を青色で示している。N−S、E−W、U−D成分を、1−20秒帯域のフィルター後速度波形で比較していて、右端の数値(黒、青)は、観測および合成波形のピーク値(kine)を表す。図34−2では、Transverse、Radial、Vertical成分に回転したものを示す。

図35−1図35−2には、モデリングによる観測波形と合成波形との比較を、計算領域内の観測点ごとに比較したものである。図36−1図36−2図36−3は、モデリングによるフーリエスペクトルの比較を観測点ごとに示す。振幅スペクトルは、S波主要動からの40秒間について計算し、移動平均によるスペクトル平滑化を行っていない。図37には、地震発生後20秒から28秒までの1秒ごとの合成された水平動スナップショット、図38には、合成された各成分ピーク速度値分布を示す。図39には、観測データと合成記録による水平動ピーク速度分布の比較を示す。上図は、1−3秒帯域フィルター後であり、下図は、3−15秒帯域フィルター後の結果である。

各成分の波形、フーリエスペクトル、および、ピーク速度値分布の比較・検証を行った結果、それぞれ周期10秒程度までの観測結果とシミュレーション結果がよい一致を示した。また、速度波形の比較では、P波、S波の初動波形の並びがよく一致した。今回の地震で最大振幅を与えるS波主要動の振幅の比較では、一部の観測点を除き、おおむね、誤差範囲(50%から200%)の差に収まっている。