(1)B 上総層群上面

B面は、千葉県中央部で行われた一連の反射法調査で、連続性が良く強い反射面として現れており、また不整合面であることから顕著な速度コントラスト面であると考えられる。これは、楡井(1977)のいう東京湾不整合面と対比され、上総層群と下総層群の境界と解釈される。(楡井(1977)は、上総層群と下総層群の境界を柿の木台層下面としている。)ただし、上総層群と下総層群の区分については、定義が統一されておらず地質学的・層序学的な議論の余地が残されている(近藤,1996)。ここでは、既存ボーリング(下総深層地殻活動観測井、江東深層地殻活動観測井)の解析結果、地表地質を参考に地質解釈を行った。

 県中央部地域の反射法断面図(平成13〜15年度)では、マーカーbが下位の地層を傾斜不整合で削剥しているのが観察され、平成15年度反射法断面図と既存の表層地質図の対比から、マーカーbは笠森層下部の万田野礫層、マーカーBは柿の木台層下部にそれぞれ対比できる。反射法断面図で、マーカーBはマーカーbを大きく削り込み、マーカーBを境に上下の反射面の構造が大きく異なることから、地質的な上総層群と下総層群の境界はマーカーBとした。モデル作成に当たっては、マーカーBを物性の境界として採用した。その理由は、

マーカーBとマーカーbは、同程度のインピーダンスコントラストを持ち、物性的にはどちらも速度境界となるが、屈折法解析からは、マーカーBを境界とする方が反射面と屈折法の境界がよく一致する。

千葉県北西部地域においては、マーカーBはマーカーbを削剥していない。江東観測井、下総観測井の地質区分が一致している。

マーカーBは千葉県中央部地域できわめてよく連続する反射面であり、広域的に追跡が容易である。マーカーbは、県中央部地域の南部・西部では存在しない。

下総層群の堆積状況分布を見ると(図8−1)、千葉県中央部の湾岸線(北北東−南南西)に沿って等深度線が並び、市原市の東京湾沖で深度約700mとなり、当地域の最深部となっている。