2−1−4 微動アレー探査

平成10〜12年度のアレーは主に千葉県の西部(西部地域)で実施した。また、平成13年度のアレーは主に千葉県の中央部(中央部地域)で実施した。これらの詳細は、各年度の千葉県地下構造調査成果報告書に記載されている。

 平成15年度千葉県地下構造調査では、4点のアレー探査を市原市から袖ヶ浦市にかけてのコンビナート地帯で実施し、既存の微動アレー探査(千葉県西部地域26点・千葉県中央部地域10点)について、反射法・屈折法の結果や坑井データと整合性をとるために再解析を実施した。再解析に用いたデータは平成10〜12年度のデータ26地点と平成13〜15年度のデータ14地点の合計40地点である。各アレーの中心点位置を図5に示す。

表2−1−4

平成10〜12年度のアレー探査は主に千葉県西部地域で実施し、先新第三系基盤の深度は概ね2500m以浅と推定されている。また、平成13年度のアレー探査は主に千葉県中央部地域で実施し、先新第三系基盤深度は大半の観測点で3000m以上と推定されている。再解析に用いた周波数範囲について、西部地域では一部分の地点を除いて、約0−15Hz(周期約5−6秒)〜1−7Hz範囲の位相速度が得られている。また、低周波数側の位相速度は約2−2km/sであり、概ね先新第三系基盤深度を反映するものと推定される。中央部地域では約0−18Hz(周期6−5秒)〜1−7Hz間の位相速度が得られている。位相速度カーブは全体的に滑らかなもので、速度境界に対応する変曲点は明瞭に見られないのが特徴である。全域にわたって、2Hz以上の位相速度が得られておらず、浅部地下構造の解析精度に影響すると考えられる。

反射法地震探査断面図における各地質区分の境界深度を用いて、逆解析における拘束条件を設定することにより地質区分と整合性ある地下構造モデルを推定した(平成15年度千葉県地下構造調査)。西部地域の地質構成は既存ボーリング資料などから、地表より下総層群、上総層群、三浦層群相当層と先新第三系基盤の4層に区分されており、逆解析モデルの層数も4層と設定した。一方、中央部地域ではH13−01、H13−02、H13−03、H13−05の4地点について、三浦層群相当層の下位に保田層群相当層の存在が反射法探査結果から推定されているので、5層モデルとし、それ以外の地点については西部地域と同じく4層モデルとして解析を行った。

観測点近傍に反射法測線がある場合、反射法断面における各地質区分の層厚をGA解析の層厚探索範囲の中心値とし、測線からの距離に応じて±10%〜±25%の範囲をGAの層厚探索範囲とした。反射法により得られたP波速度の1/3〜1/2をVs探索範囲の中心値とし、±25〜±50%の範囲をVsの探索範囲とした。先新第三系基盤のS波速度Vs≒3km/sと想定し、最下層のVs探索範囲は3km/sを中心として±5%の範囲を探索範囲とした。

解析結果を図6に示す。表層の下総層群を除き、各地点の解析結果は反射法調査結果と整合性のある層区分が得られている。下総層群のS波速度については、一部の地点において反射法調査結果との差が大きい。また、個別の地点において近似誤差を改善するために、下総層群を2層に分けて調整した。得られた各地質区分のS波速度はばらつきがあるものの、一定の範囲内に収まっている。また、各地質区分におけるS波速度と深度の関係は深度の増加につれて増加関係を示している。各層群のS波速度は以下の通りである。

下総層群    0−4km/s〜0−65km/s

上総層群    0−7km/s〜1−15km/s

三浦層群相当層 1−1km/s〜1−65km/s

保田層群相当層 1−8km/s〜2−2km/s

基 盤 岩   ≒3−0km/s

基盤岩のS波速度については、基盤岩の層厚を与えられないこと、観測された位相速度曲線の長周期側の値に依存することから精度が低い。