3−5 今後の課題

今年度までで千葉県中央部に関する地下構造調査の現場作業は一応終了した。今後、当地域の三次元的地下構造モデルの作成に向けての課題を以下に示す。

○ 市原市有秋台付近に最大深度5000mを超える基盤の落ち込みが想定されるが、この妥当性について、さらに検討を加える必要がある。例えば、地震観測波形の走時の遅れを検討する、推定される地下構造からブーゲー異常のフォワードモデリングを行なう、などが考えられる。

○ 市原市牛久西側に基盤の落差約1500mの断層が確認されたが、この断層は平成14年度測線の養老川との交点付近へ連続していると可能性が高い。(昨年度までは、単に基盤の起伏があると解釈していた。)これだけの落差を持つ構造がどのようにしてできたのか、断層の活動時期・断層の連続性等について今後検討していく必要がある。

○ 保田層群相当層はこの断層より東と北へは分布していないが、西方向(東京湾)への分布範囲については、屈折法の結果による推定のみであり、今後の調査によって明らかにしていくことが望まれる。

○ 今年度の基盤岩の屈折波速度(4.9km/s)は、平成13年度の調査結果(4.9km/s)と同じで、平成14年度の調査結果(5.2km/s)より有意な差がある。また、房総半島の東部では4.5km/sと求められている。こられの違いは基盤岩の岩質の違いを反映している可能性があり、周辺地域の基盤岩の分布・境界等もあわせて検討していく必要がある。

○ 千葉県中央部地域では、検討の結果、上総層群と下総層群との地層境界がほぼ屈折法地震探査の速度境界になったが、千葉県西部地域では、屈折法の速度境界が下に位置する。この地層境界について再度検討する必要がある。

○ バイブロサイスを震源とする屈折法地震探査や反射法地震探査観測時に記録された変換S波は、浅層部のS波速度構造モデルを補完するために利用可能と考えられるが、この利用方法について検討が必要である。

○ 今年度、微動アレイ探査として多重回転三角形アレイによる多量のデータ取得を試みた。このデータに対して通常の解析を実施し、目的に沿う解析結果を得ることができたが、どの程度までのデータ量があば十分な結果を得ることができるのか検討し、今後のデータ取得に役立てる必要がある。

○ 今年度二次元的地下構造モデルを作成したが、まず一次元構造において地震動のシミュレーションを行い、構造の妥当性を評価すべきである。

○ 二次元的地下構造モデルにおいては、反射法地震探査データや坑井データの欠ける部分において信頼性が低い。これらについては、実際のシミュレーションを通じて妥当性を評価していく必要がある。