(2)位相速度解析

位相速度解析は、予備解析、テスト解析および本解析の3つのステップで行った。

予備解析は主に観測データのレベル(パワースペクトル)、ノイズの周波数範囲、大型車両の通行による異常振動等を十分に把握し、本解析に用いるデータを抽出するためのパラメータを決定する解析であり、テスト解析は主に解析に用いるデータ基本区間長等パラメータを決定する解析である。

本解析は予備解析およびテスト解析により得られたパラメータを用いて、観測データから不良データを除外し、良いデータのみ用いてレイリー波基本モードの位相速度を推定する解析である。

今回の解析では空間自己相関法を適用して位相速度を求めた。解析に用いた主なパラメータは表2−4−5に示す。

本解析により得られた各地点のレイリー波基本モードの位相速度曲線は図2−4−9に全調査地をまとめて示すとともに、図2−4−10図2−4−11図2−4−12図2−4−13−1図2−4−13−2図2−4−13−3に各地点におけるパワースペクトル、空間自己相関係数、得られた各アレイ半径毎の位相速度および求めた観測位相速度を示した。

求めた各地点の観測位相速度について以下のことが言える。

・ 観測した微動のパワーレベルは下記のような範囲で変動していた。

低周波数域のピーク周波数(0.25〜0.4Hz):1×100〜5×102(10−6cm2/s)

約1Hz以上の高周波数域:1×10−2〜2×100(10−6cm2/s)

低周波数域については、比較的強いパワーの微動が得られたものと思われる。

・ 工場敷地内で観測したGOI,ANS,NKSの3地点における工場ノイズは、主に約5Hz以上の周波数域において鋭いピークを持ったノイズとして現れている。3〜5Hzの周波数範囲にもノイズがやや見られたが、適切なフィルター処理を行うことにより、ノイズの影響をかなり改善することができた。

・ 観測位相速度は、図2−4−9に示すように0.134Hz〜5.7Hz(周期0.18秒〜7.5秒)、位相速度0.25km/s〜2.2km/sの範囲で推定され、低周波数域から高周波数域の広範囲な観測位相速度が得られた。

・ 4地点の観測位相速度曲線は類似しており、S波速度構造に大きな構造変化はないものと推察される。