(4)レイトレーシングによる地下構造の推定

レイトレーシングによる方法では、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いて、何回か試行錯誤を繰り返し、モデリングと実記録の走時合わせを行った。

レイトレーシングは、まず今年度の測線のデータのみを用いて行い、次いで昨年度(平成13年度)のデータと連続的なモデルを作成するため、昨年度の測線を含めて見直し、統一的なモデルを作成した。

今年度測線部分の入力モデルの構造は、反射法から求まった深度断面図(図2−2−14−1図2−2−14−2)を参照しながら決定し、速度のみを変えていってもっともモデルと観測値の走時のずれが少ないと思われるもの初期モデルとした。

このモデルでは、去年の屈折法の解析では明瞭でなかった三浦層群上面に相当する面の屈折波が、一部の記録で説明できている。逆に、去年の屈折法では認められた保田層群相当層上面での屈折波が、保田層群相当層が今年度測線の中間部分で尖滅していると考えられるため、現れてこない。

今年度の調査測線と昨年度の調査測線は重なる部分があり、両者モデルの重複部を同じモデルになるように変更し、両者のレイトレーシングをやり直し、最終モデルとした。

レイトレーシングと全発震点での実データの初動読み取り値の比較を図2−3−5−1図2−3−5−2に示す。この図は、10受振点ごとの初動読み取り値・レイトレーシングの結果求まった走時のグラフ、モデル構造図とレイトレーシングのパス、最下段にモデルの速度構造を並べて表示したものである。図2−3−5−1が昨年度(平成13年度)の結果、図2−3−5−2が今年度(平成14年度)の結果を示す。

また、基盤からの屈折波が確認された平成13度の発震点D2、今年度の発震点D1・D2の屈折波強調処理後の記録と、10受振点ごとの初動読み取り値・レイトレーシングの結果求まった走時のグラフ、最下段にレイトレーシングのパスを並べて表示したものを図2−3−6−1図2−3−6−2図2−3−6−3に示した。

最終的なモデルをまとめたものを図2−3−7 の下図に示す。

基盤岩の速度は、昨年度測線については4.9km/sとしたが、今年度測線については5.3km/sとなった。この違いは有意であるが、どの部分で速度が変化しているかについては、明瞭でない。

保田層群相当層上面に対応する屈折波は、平成13年度の調査結果では見られたが、今年度の結果には見られなかった。保田層群相当層のP波速度は、3.6〜4.2km/sである。

逆に、三浦層群相当層上面に対応する屈折波は、平成13年度の調査結果では見られなかったが、今年度の結果で見られた。平成13度の反射法断面図の解釈結果をもとに、モデルを作成したところ、ダイナマイト発破点D2の記録で、初動になってない屈折波と対応することが分かった。この結果は、図2−3−6−1に示した。三浦層群相当層のP波速度は、2.3〜2.8km/sである。

上総層群・下総層群に相当する堆積層の速度構造は、水平方向に大きな変化がない。屈折波の速度の境界は、解釈された上総層群と下総層群の境界よりもやや下位(上総層群中)にある。上総層群のP波速度は、最大2.4km/sであるが、測線北東部では上総層群が厚くなるにつれ、速度は最大2.15km/s程度と遅くなる。

最上位の屈折層(下総層群と上総層群を含む)のP波速度は、1.7〜2.0km/sである。