(1)初期モデルの設定と解析手順の概要

S波速度構造を解析するにあたっての解析の基となる初期地下構造モデルは平成12年度微動アレー調査業務の解析結果(表2−4−5参照)を参考に、第1・2層は沖積層を含む下総層群、第3・4層を上総層群、第5層を三浦層群、第6層を先新第三系基盤とする6層構造を基本とした。

初期モデルの各層の深度(層厚)は、アレー近くに地殻活動観測井の試錐データ(孔井一覧を表2−4−6に、位置は図2−4−36)がある場合は、そのデータを参考とし、試錐データがない場合は図2−4−37図2−4−38図2−4−39図2−4−40に示した鈴木(1996)による各地層の深度や層厚の分布図及び図2−4−41の楡井(1981)による東京湾不整合基底の等深線図等から読み取った値参考にした。なお、平成12年度屈折法地震探査結果等を参考としたアレーもあり、それらについては個々に記した。

また、初期モデルの各層のS波速度は表2−4−5に示す「千葉県:平成12年度微動アレー調査業務」のS波速度や他の資料(一例を図2−4−35に示した)を参考にした。

設定した初期モデルをもとにfGAによる逆解析を行い、最適解を絞り込んだ。逆解析は、各層の深度とS波速度を同時に絞り込んでいくものであるが、試錐データで地層区分と深度が把握されている地点については、出来るだけ層数や深度の調整は行なわずに、初期モデル各層のS波速度を求めることを優先した。フィッティングが悪い場合だけ、深度や層数を適宜増減させた。

試錐データがない場合も、図2−4−37図2−4−38図2−4−39図2−4−40図2−4−41から推定される深度と極端にかけ離れることはないと考え、初期モデル各層のS波速度を求めることを優先させ、フィッティングが非常に悪い場合は、観測分散曲線の変曲点や勾配などから深度やS波速度の目安をつけ、これらをモデル値として解析を行なった。

ただ、微動探査で解析される深度はアレー周辺の平均的深度で、試錐データで確認された深度とは違いがでる可能性があるので、いずれの場合も逆解析に際して深度の固定は行わず、近くに試錐データ等がある場合は1割程度、ない場合は2〜3割の増減の幅をもたせた解析を行った。

なお、S波速度構造はアレー中心(地表面)からの深度として解析するので、既存資料も全て地表面からの深度に読み替えて解析を行なった。このため、以下の文章中の深度はアレー中心(地表面)又は孔井孔口からの深度(四捨五入してm単位)で記し、標高で表す場合だけ注記をつけた。

参考のため千葉県の地質層序を表2−4−7に示した。