(5)分散曲線

各アレーにおいて空間自己相関係数を確定した後、ベッセル関数表を利用して周波数ごとの表面波位相速度を求め、分散曲線を作成した。13ヶ所のアレーに対する計算結果を、図2−4−18図2−4−19図2−4−20図2−4−21図2−4−22図2−4−23図2−4−24図2−4−25図2−4−26図2−4−27図2−4−28図2−4−29図2−4−30図2−4−31図2−4−32図2−4−33に示す。

分散曲線の特徴と、それから予想される各観測地点での地下構造の状態を列挙すると、次のようになる。

●位相速度の計算結果は、市原市以南の5箇所と千葉市街以北の5箇所に大別される。

●富津から市原インターチェンジまでの間の5箇所では共通に、長周期(約0.1Hz〜0.2Hz)から2Hzまでの範囲で緩やかに変化する分散曲線が得られた。これは、この地域の速度構造が局所的な大きな変化が無く、地質構造が南北方向に緩やかに変化していることを示している。

●千葉市街から佐倉市に至る5箇所の測定点では、全体的に位相速度は低く、また0.3Hz以下の低周波数で、位相速度が急激に立ち上がる傾向が見られた。一般的に、分散曲線の変曲点(高周波側から低周波側にかけて、曲線の立ち上がりが大きくなる箇所)が低周波側にあるほど、地下の高速度層(基盤岩など)の深度は深くなる。したがって、この分散曲線の特徴は、基盤が比較的浅い深度にあり、基盤上に低速度の堆積層があるという、この地域の特徴を示している。

分散曲線の高周波側で、位相速度が一定になった部分から、各アレーの浅層部のS波速度を見積もることができる。No.13−01−FUT(富津)からNo.13−05−IIC(市原)に至る5箇所ではNo.13−01−FUT、No.13−02−SDUでは浅層のS波速度は低く、北側のNo.13−05−IICではS波速度が高く、固い地層であると推定される。千葉市街以北の5箇所では、No.13−10−SKR(佐倉)で特に浅層は軟らかく、それ以外の地点はほぼ同様であることがわかる。