(3)パワースペクトル

上記((2)−(a)および(2)−(b))のパラメータ a) 〜 c)に基づき、各観測地点の大アレー、中アレーおよび小アレーについて、それぞれの観測点7点の約82秒間のデータに対するパワースペクトルを計算した。図2−4−13図2−4−14図2−4−15はNo.13−01−FUT地点の大・中・小アレーの計算結果を示しているが、ほかの観測地点の計算結果についてアレーごとにまとめて資料集に示す。

いずれのアレーでも、パワースペクトルの強さにはある程度のばらつきが見られるものの、スペクトル曲線の形状は大局的によく一致しており、空間的定常性は特に問題ないと判断された。

すでに2.4.1−(1)に述べたように、微動のパワーは、1秒以上の長周期の波は気圧変化、外洋の波高などの気象条件に、1秒以下の短周期では交通量などの人間活動の状況など発生したものである。ただし、その周波数特性は震動の周波数特性と測定点直下の地下構造の増幅・減衰特性の積になり、どちらがスペクトル特性を決める主要因であるか一概には決められない。ただし今回の微動データの観測スペクトルは長周期の特性は主に天候の変化に左右されていることがわかる。

具体的に、パワースペクトルは、長周期側(1秒以上)の場合、多くのアレーで、周波数約0.2〜0.3Hz(周期約3〜5秒)と、周波数約0.7Hz(周期約1.4秒)の2つの卓越周波数が見える。No.13−01−FUT地点の大、中、小アレーの各パワースペクトル例を見ると、両ピークのレベルが個別に変動していることがわかるが、同じことが概ねほかのアレー接地箇所についても言える。

また、同一地点でも異なる時間では卓越周波数も多少の変動がある。

例えばNo.13−03−YSD地点ではNo.13−01−FUT、No.13−02−SDU地点などと比べて長周期の微動レベルは低い。このため、約0.3Hz以下の範囲では位相速度の推定精度も低下している。

周波数1.0Hz以上の周波数領域では、ほぼ全てのアレーに共通して1.0〜2.0Hzのパワーは低く、主に3.0〜4.0Hzのパワーが卓越する傾向があるが、このピークは時間、場所による変動が大きい。

また、処理解析に用いる周波数範囲は、前節(2)のd) に記すとおりとした。