(4)まとめおよび提案

極小アレー観測は、地表の条件(地盤の状態や地盤改変など)に非常に左右されやすいと予想される。大・中・小アレーの調査では、やや広い範囲の構造をその地域の平均値として求めるが、極小アレーの調査ではごく狭い範囲の局所的な構造を推定するために、各アレー半径で得られた位相速度曲線を単純に結び、代表的な極浅層部から地下深部までの構造としてその結果を評価することには疑問点が残る。そこで、極小アレー観測については局所的な極浅部構造の把握を目的として適用することに限定して調査することが望ましい。仮にある地点における地下構造を極浅層部から深部まで一連の評価をしなければならない場合には、大または中アレーの範囲(地震計設置点それぞれの位置)内において数カ所〜十数箇所の極小アレー観測を行い、極小アレー観測で得られた平均的な分散曲線を求め、一連の解析のなかで使用していくなどの考慮が必要となろう。

極小アレーで扱う浅層構造では速度逆転層が、よく存在することがある。現状では微動アレー探査のみで速度逆転層などの構造を出すのは難しいと考えられる。ただし、今回の調査では速度逆転層が推定されるKMG、SMUの観測分散曲線が、特に速度逆転層の見られないGYT、ABKのそれと違って異常分散(周波数が大きくなるにつれて位相速度が速くなる)や分散曲線が水平になる状態が見られた。そのために、こういう分散曲線が得られた場合には速度逆転層の可能性も推定できると考えられる。いずれにせよ、今回は4点での観測だったので今後観測時例を増やして普遍性を得ることが必要と考えられる。

極小アレーは、単独で浅部構造探査に用いる用途もあるが、観測位相速度曲線がスムースに繋がるようにアレー配置を設定すれば深部に着目したアレー探査結果と統合して用いることができると考えられる。

・千葉県北部・北西部地域において、極小アレー観測によるS波速度400m/sec以上の工学的基盤面を把握する微動アレー調査では、設定するアレー半径を48m、24m、12mおよび6m(場合によっては3mも追加)として観測を行う必要がある。