(5)観測時期および気象との関連

周期1秒以上の微動の発生源は、自然現象の中でも気圧変化に伴う海象・気象現象が主となる。風速、波浪などの変化に応じて、結果的に微動のパワー(微動の振幅)が変化する。

そこで、冬季、夏季、秋期および台風接近時のデータを取得し、自然現象(気圧、風速、波浪など)と微動のパワーとの関係について比較・検討を行った。さらに季節による海象・気象データと微動パワーとの関係についても調べた。以下に、観測時期および気象との関連について述べる。

図3−19−1に千葉県の気圧変化および風速変化(平成11年12月〜平成12年3月)を、図3−19−2に同(平成12年8月〜9月)を、図3−20−1に海洋波浪の周期変化(平成11年12月〜平成12年3月)を、図3−20−2に同(平成12年8月〜9月)を、図3−21−1に海洋波浪の波高変化(平成11年12月〜平成12年3月)を、図3−21−2に同(平成12年8月〜9月)をそれぞれ示す。

<微動のパワー>

・微動のパワーは気象現象と密接な関係があり、低気圧の接近にともなう風速や波浪の変化により、微動のパワーが強くなる。また、低気圧の通過後は急激に変化し2日程度で微動のパワーは1/10程度に激減することがわかった。さらに、微動のパワーは「気象海象資料」の気圧変化に対し、時間的におよそ24時間遅れて変化する傾向がみられた。

・観測微動の卓越周期は、海洋波浪(7〜12秒)の1/2〜1/3程度である結果が得られたが、まだデータ等が少なく、相関については不明瞭である。

・深部構造の把握(大アレー:最大アレー半径2,000m)に必要な周期5〜7秒の長周期成分の微動データは、海洋波浪のパワーが大きくなる冬季に実施する方がデータの品質上、有利となる結果が得られた。本調査においては、大アレーの観測を冬季に集中させたことで、効果的に低周波数領域の微動を捉えることができた。

図3−22に夏季および冬季における代表的な波形とパワースペクトルの比較した結果を示す。夏季の台風通過時の微動のパワーは、冬季の晴天時(平穏時)に比べ約5〜6倍であった。この結果から判断すると、多数の調査地点がある場合などは基本的に長周期成分の観測を11月〜3月の期間(冬季)に集中的に実施するのが望ましいと考えられるが、夏季においても台風の接近時など長周期成分の観測は十分可能といえる。

・冬季・夏季の微動データの比較から、中アレー(最大アレー半径600m)・小アレー(最大アレー半径200m)については観測時期を特定する必要はなく、観測時期を分割しても得られる結果は同じであったことから、同一地点の観測においては年間を通しての調査が可能であるといえる。

・まだ取得したデータ量が少ないので、今後とも気象と微動との関連に供するデータの蓄積が必要である。