(1)観測された位相速度

微動アレー調査のうち、極浅層部(深度数10〜100m程度)を対象とした地下S波速度構造の把握、S波速度が400m/sec以上である土木工学的基盤面の把握を目的として、極小アレー観測を実施した。

極小アレー観測は、No.3(GUT)、No.13(KMC)、No.20(ABK)およびNo.25(SMU)の計4地点において、再観測・追加観測を含め、平成12年9月19日〜平成13年7月19日の期間において実施した。また、観測においては、東京大学地震研究所から借用したAKASHI地震計(加速度計)とLENNARTZ地震計の2種類を適宜用いて実施した。これら4地点での観測においては、中・小アレー観測と同様に観測開始前にハドルテストを実施し、機器特性の一致性を事前に確認した。極小アレー観測のハドルテスト記録は、それぞれの地点ごとに別冊資料集にまとめて付した。

図2−65にNo.3(GUT)地点における同時刻の2種類の地震計による波形、パワースペクトルの一例を示す。これらの波形のうちAKASHI地震計の波形は加速度を示し、LENNARTZ地震計の波形は速度を示したものである。なお、AKASHI地震計で得られたデータは、予め加速度データから速度データに変換(時間積分を実施)してから解析に供した。

図中、観測時間中のパワースペクトルは1Hz以上の高周波数領域において、その形状が時間と共に若干変化する傾向があることを確認した。極小アレー観測では1Hz以上の高周波数領域が重要なデータとなってくるため、データ編集の作業は慎重に行った。また、アレー半径が小さいため、パワースペクトルは7台の地震計で大中小アレーに比べ、高周波数領域(約1Hz〜10Hz程度)において安定した結果となった。他の3地点における波形、パワースペクトルのパターンについてもNo.3(GUT)地点と同様な傾向が認められた。この地点も含め、計4地点で取得された観測波形およびパワースペクトルは別冊にまとめて付した。

図2−66にNo.3(GUT)地点における2種類の地震計から得られた空間自己相関係数の一例を示す。これらの図から空間自己相関係数を示す曲線は、おおむねベッセル型の変化を示しており、データについての信頼性は確保されていることが確認できた。また、各地震計間距離ごとの空間自己相関係数は、AKASHI地震計とLENNARTZ地震計の両方で、ほとんど同じ形状であることを確認した。他の地点の空間自己相関係数については、別冊にまとめて付した。

図2−67−1および図2−67−2にNo.3(GUT)地点における2種類の地震計で求められた位相速度曲線(各アレー半径による分散曲線を統合させた結果)をそれぞれ示す。これらの図中、極小アレー観測で求められた位相速度曲線の周波数帯域は、AKASHI地震計で1.2Hz〜16.1Hz、LENNARTZ地震計で1.23Hz〜9.88Hzの範囲である。大・中・小アレーの位相速度曲線(黒色の点線で表示)とオーバラップさせた。他の地点の位相速度曲線図は、別冊にまとめて付した。