(2)S波レイトレーシングの試み

震源近傍および三成分受振器の水平成分中に見られたS波屈折波と思しき波の走時を読み取り、S波のレイトレーシングを試みた。結果を図2−34に示す。

2.3.3で求めた測線2のP波屈折法のモデル構造を基本としてS波速度を与えた。図2−33−1に見られた見かけ速度1.2km/sの波は、レイトレーシングの結果、深度1300〜1100mに見られる反射法の反射面の境界とほぼ一致することが分かった。これは、上総層群相当層中の下位に位置する。

昨年度の屈折法記録中には、基盤のS波屈折波らしき波が見られたが、これも今回レイトレーシングを試みた。結果を図2−35に示す。残念ながら、昨年度基盤のS波屈折波と考えた波は、現実的なS波速度を与えてもうまく説明することができず、2〜2.5秒程度理論値より速く出現していることになった。

これは、震源から基盤までをP波、基盤上面でS波に変換して基盤内をS波で伝播し、地表までS波で戻ってきた屈折波ではないか、と考え、モデルを作ってレイトレーシングを試みたものが図2−36である。これは、測線の東端のみ堆積層にP波の速度を与え、基盤および残りの堆積層中にS波速度を与えたものである。まだ完全には一致していないが、図2−35に比べて一致する方向にあり、これらの屈折波がP−SV変換波として説明できるのではないかと考えられる。