(2)位相速度解析

@No.25(SMU)地点について

・低周波数領域で位相速度が減少するような傾向、いわゆる「拝み」の現象は、追加観測で実施した大アレー(半径2,000m)のデータを昨年度のデータに付加し、再解析したことにより、低周波数領域(長周期側)の分散曲線が得られ、位相速度曲線上において「拝み」の現象は見られなくなった。すなわち、適切なアレー半径で観測を行うことにより、低周波数領域(長周期側)の微動データを捉えることができた。

・アレー半径2,000m以上の観測データを解析するブロック長204.8秒、409.6秒とでは、409.6秒の方が低周波数領域(長周期側)において位相速度が大きくなった。

ANo.26(FNB)地点について

・アレー半径3,000mの分散曲線は、アレー半径のより小さい2,000mの分散曲線と比較すると、まとまりに欠け、他の分散曲線との相関も低い傾向が認められた。観測時の微動パワー、ノイズには特に問題になるようなことは無く、アレー半径3,000mの観測データ自体が空間的定常性を十分満たしていなかった可能性が考えられる。

BNo.1(TDL)、No.6(MKH)、No.10(YAG)、No.15(CNT)、No.17(NGC)、No.21(KHK)およびNo.24(NDA)の7地点について

・大(アレー半径2,000m)、中(半径600m)および小(半径200m)の3セットでのアレー半径にて観測を実施し、それぞれの地点の位相速度曲線を求めた。アレー半径2,000mの大アレーの観測データを解析するブロック長204.8秒、409.6秒とでは、409.6秒の方が低周波数領域(長周期側)において位相速度が大きくなった。

・観測値と位相速度曲線の理論値との差を相対誤差(百分率)で示した結果について、1ブロック長204.8秒と409.6秒とを比較すると、どちらも同じような傾向を示し、特に解析ブロック長による差は認められなかった。

・それぞれの地点で求められた周波数(周期)の範囲は、0.14Hz(7.14秒)〜2Hz(0.5秒)であり、位相速度曲線を概観すると、周波数の減少(周期の増加)と共に位相速度の傾きの急変するところ(以下「変曲点」と呼称)にそれぞれ違いが認められる。その違いに注目すると、これらの位相速度曲線はおおよそ3つのパターンに分類できる(詳細については、(3)逆解析に記載した)。

CNo.2(URC)、No.3(GUT)、No.4(ICC)、No.5(FNC)、No.7(NRC)、No.8(MGM)、No.9 (YCY)、No.11(MTC)、No.12(YBS)、No.13(KMC)、No.14(SRC)、No.16(KRG)、No.18(KSC)、No.19(SYT)、No.20(ABK)、No.22(INC)およびNo.23(NGR)の17地点について

・大アレー(アレー半径2,000m)のみの観測を実施し、それぞれの地点の位相速度曲線(半径2,000mの分散曲線)を求めた。

・17地点の位相速度曲線は3セットアレー観測を実施した9地点の位相速度曲線と同様に、曲線の形状からおおよそ3つのパターンに分類できる。