(4)本年度得られた結果の特徴について

逆解析を実施した9地点での位相速度曲線全体を概観すると、周波数の減少(周期の増加)と共に位相速度の傾きの急変するところ(以下「変曲点」と呼称)にそれぞれ違いが認められる。その違いに注目すると、これらの位相速度曲線はおおよそ次の3つのパターンに分類できる。

・パターン@:変曲点が2ヶ所、周波数約0.42Hzと0.22Hzにあり、0.22Hzより低周波数側で位相速度の増加率が特に大きい。調査地点No.21、No.24がこれに分類される。9調査地点中、これらは東京湾から最も遠い方の北側に、そして、利根川沿いにある。既存資料によれば基盤の深度が最も浅い。

・パターンA:変曲点が1ヶ所、周波数約0.35Hzにあり、それより低周波数側で位相速度は比較的穏やかにかつ単調に増加する。調査地点No.10、No.15、No.17、No.25の4地点がこれに分類される。これらは利根川と東京湾とのほぼ中間のところに位置する。

・パターンB:変曲点が2ヶ所、周波数約0.23Hzと0.21Hzにあり、その間で位相速度は急に増加するが、0.21Hzより低周波数側では緩やかな増加となる。調査地点No.1、No.6、No.26の3地点がこれに分類される。9調査地点中、これらは東京湾に最も近い南側にあり、既存資料によれば基盤の深度が最も深い。

図3−9に大中小3セットアレーの位相速度曲線のパターン分類の位置図を示す。

また、南北方向および東西方向の断面を想定して言えば、

・南北方向では、北から南側に向かって基盤の深度が深くなる、また、東西方向では、東から西側に向かって基盤の深度が深くなる、などの深度の傾向は認められるが、現時点では、基盤と考えられる最下層のS波速度が未確定であり、S波速度の傾向とパターンの分類との関係はつかめていない。

地質との対比においては、

・No.25(SMU)地点を基準点として考察すると、6層構造として解析した地点では、第1、2層が下総層群(沖積層を含む)に、第3、4層が上総層群に、第5層が三浦層群に、そして第6層が先新第三紀基盤に相当すると考えられる。また、5層構造として解析した地点では、第1、2層が下総層群(沖積層を含む)に、第3、4層が上総層群に、そして第5層が先新第三紀基盤に相当すると考えられ、三浦層群は欠如した結果で推定される。