3−1−1 P波反射法地震探査

まず、反射法断面図の性状に対しては、以下のようにまとめられる。

・測線東部では、受振器の設置状況が良く、ほとんどの発震点でバイブロサイス2台で高出力レベルの発震が行なえたため、良好な断面図が得られている。

・先新第三系基盤からの反射は、測線全体で追跡することができるが、測線西部では部分的に弱くなっている(RP No.500〜600付近、およびRP No.740〜820付近)。この区間の前後では大型バイブロサイスによる発震記録も含まれるが、測線東部と比べて、全てのオフセット距離で一様に基盤からの反射が見えているとは限らない。受振点のノイズ状況に影響されている部分が大きい。

・下総層群相当層から地表までは比較的平坦であるが、測線の中央部でやや深くなっている傾向が見られる。この部分では、RP No.570付近を境界として、東西で反射面の見かけ分解能が異なっている。両側の震源は共にミニバイブであり、反射面はよく連続していることから、発震点直下が砂であるか粘土であるか等の条件によって発震状況が異なり、このような差異が見られるものと判断される。

・RP No.800〜880にかけても、浅層部での反射波の連続性が悪くなっている。これは、二十世紀ヶ丘の丘陵部に相当する。この区間では大型バイブロでの発震も含まれ(図2−8−4など)、単純に地表のノイズ状況の問題とは言えない。この区間は夜間の屈折発震の時点でもノイズレベルが高く、地表あるいは地表直下に何らかの原因がある可能性が大きい。発震点地下の放水路のトンネルがあることとの関係は不明である。

・今回の取得仕様で、先新第三系基盤の上面までの反射面を捉えることができた。ただし、深度約600mより深い上総層群・三浦層群内部の反射面は、部分的に反射波が明瞭でない部分がある。

解析の結果得られたマイグレーション深度断面図に対して、データ処理の過程で得られる区間速度で着色したものを最終断面図として図3−1に示す。

特徴的な反射波境界について解釈を行った結果を図3−2に示す。昨年度(平成10年度)の測線で主要地層境界の解釈を行なったが(図3−3)、これは下総観測井の資料(鈴木、1996)などを参照し、そこを出発点として解釈図面を作成したものである。下総地殻活動観測井と本年度測線までの最短距離は約1.5kmであるが、構造がこの間で変化しているため、直接的な対比は行なっていない。本年度の測線は、鎌ヶ谷市内で昨年度の測線と交差しており、観測井から測線交点までの距離は約3kmあり、観測井から測線交点を経て本年度測線に結んで地層の対比を行なった。

以上の結果から次のことが明らかとなった。

・昨年度(平成10年度)調査測線とは、その交点において重合断面図・深度断面図ともに反射波の強弱・往復走時が一致し、地表より先新第三系基盤岩上面までの反射面の対比を行なうことができる。ただし、三浦層群上面付近については、両年度の測線共に明瞭な反射波がないが、周辺の反射波から対比を行なうことができる。

・先新第三系基盤の深度は、測線東端で約1300m、測線西端で約2000mであり、その間で大きな落差はなくほぼ単傾斜の構造になっている。この構造は、既存ボーリング資料や重力異常図のコンターの傾向と一致する。測線の中央部(RP No.500付近)にはやや起伏がみられる。

・昨年度の調査結果でも、南南西方向に基盤深度が深くなる傾斜構造が見られる。昨年度測線の傾斜のほうがやや急であり、昨年度測線に近い方向に基盤上面が傾斜していると推定される。これは、重力異常の傾向と矛盾しない。

・三浦層群と上総層群の境界は、昨年度の測線との交点を出発点として測線東部へは追跡することが可能であり、三浦層群は東方向へ急激に薄くなり、船橋市小室町(RP No.160)付近で消滅している。西方向へは、途中区間で断面図にノイズが多いため確実ではないが、上下の反射面の傾向から三浦層群はかなり厚くなっていると推定される。

・測線東半分の上総層群内部で、ほぼ深度1000mに強い反射面が見られる。この反射面より下位の上総層群中では堆積構造はほぼ成層構造であるが、ここより上位、深度500〜1000mにかけて、東落ちの反射波の集合がみられる。これらの反射波は上下の反射面と斜交している。この反射面は、測線西半分へも連続しているが、反射波の傾斜は緩やかになっている。この傾斜した反射波の集合は、昨年度測線では見られない。昨年度測線は、傾斜した反射波の走向方向になっているためと考えられる。

・地表から深度300m程度までの下総層群のP波重合速度は、1.6〜1.8km/s程度で測線方向への有意な変化は見られない。上総層群より下位の堆積層のP波速度は、上総層群のみ分布する測線東端で1.8km/sから2.3km/s、上総層群および三浦層群の分布する測線西端で1.8km/sから2.8km/s程度まで深度とともに増加している。これらの速度は、昨年度測線とほぼ同じであり、測線の交点では良く一致している。