(3)昨年度データとの比較

図2−59に昨年度および本年度の位相速度曲線とS波速度構造を示す。前述したように最大アレー半径を2,000mとして追加観測を実施したことによって、昨年度よりも本年度の方が位相速度曲線において、0.24Hz(4.17秒)よりも低周波数(長周期)成分側の位相速度が増大した結果となった。

最下層の深度およびS波速度を比較すると、昨年度は1,520m以深に2.00km/s以上のS波速度を推定したのに対し、本年度は1,570m以深に2.57km/sという結果を得た。地震基盤面と考えられる最下層の深度は、本年度と昨年度と、ほぼ同じ値であったが、S波速度については本年度の方が約0.6km/s大きいという結果となった。また、最下層よりも上位の層については、各層の深度およびS波速度とも昨年度とほぼ同じ値を得た。

図2−60に試錐デ−タとSPAC法によって推定された地下構造の対比結果(山水ほか,1981)を示す。これは昨年度の結果に本年度の結果を追加したものである。この図をもとに本年度の結果をみると、下総層群および上総層群は各々2層に分帯され、下総層群がVs=0.36km/sec〜0.55km/sec、上総層群がVs=0.70km/sec〜0.87km/secであり、第5層はVs=1.11km/secで三浦層群に相当すると考えられる。先新第三紀基盤のS波速度は本年度の結果で未確定ではあるが、Vs=2.57km/secと推定された。

また表3−5にS波速度Vsについて、下総地殻活動観測井におけるVSPデータの結果と、微動アレー調査により推定した結果を示した。表中の右欄に示したVSPのVpの結果とSPAC法のVsとを対比すると、Vp/Vsが下総層群で4.4〜3.3、上総層群で2.9〜2.5、三浦層群で2.4となった。基盤については、SPAC法でのVsは未確定であるが、平成11年度の推定値Vs =2.57km/sを用いて算出すると2.0となった。一方、下総観測井のVSPデ−タのVpとVsから求めたVp/Vsは下総層群で6.4〜3.5、上総層群で3.8〜2.4、三浦層群で3.0〜1.8および基盤で2.2〜1.7となっている。各地質ともVSPの結果とほぼ同じ値が得られた。

参考までに表3−4に既存の微動アレ−調査結果(松岡,1996)と対比結果を示した。本年度の追加観測によって、基盤までの各層の深度およびS波速度構造は、ほぼ同じ値となった。長周期成分の位相速度は前述したように未確定であるため、基盤のS波速度は、現時点では推定値としている。

また、平成10年度に実施したS波の反射法地震探査結果と平成11年度微動アレー調査結果とを対比させると、深度610mまでの境界面までは、微動アレー調査で求めた地質の境界付近に反射面が対応するような結果が得られた。

表3−5に示した下総地殻活動観測井のVSPデータおよび太田S大砲データのS波速度を使用して位相速度解析を行い、計算位相速度曲線を求め、実際観測した微動データから求めた観測位相速度曲線と比較した結果について、図2−61図2−62にそれぞれに示す。

図2−61は既存資料のうち、太田S大砲データから得られたS波速度を用いて解析を行い、計算位相速度曲線を求めて観測位相速度曲線と比較した図である。どちらの位相速度曲線もよく似た形状を示し、最下層を含めた上位層の深度およびS波速度とも比較的同じ値を示しているといえる。

また、図2−62はVSP探査のS波速度データ(図の右側、緑色の実線で示した値)を用いて解析を行い、計算位相速度曲線を求め、観測位相速度曲線と比較した図である。観測位相速度曲線と計算位相速度曲線とは、低周波領域にあたる0.2Hzよりも低い範囲を除いて曲線の形状がほぼ同じである。最下層のS波速度の値を除き、深度およびS波速度の値は計算値も観測値もほぼ同じ値を示す。

微動アレー調査で得られた結果と既存資料の各データから求めた結果とはどれも整合性が良いものであった。

図2−63はNo.25(SMU)地点での既存資料(VSP探査結果(山水ほか、1999)および太田S大砲それぞれのS波速度)と微動結果を比較したものである。前述したように、観測で求めたS波速度構造は、最下層のS波速度を除き、既存資料の値とほぼ一致したものであり、他の手法で得られた値との整合性もあることがわかる。なお、比較に用いた解析の1ブロックの長さは204.8秒を用いて行った。