(1)地震データの波形およびスペクトル

2つの地震データについて、N−S、E−W、N−S成分ごとのオリジナル加速度波形を図3−4−5および図3−4−6に表示する。波形右端にはピーク加速度値を示している。次節の2.5次元シミュレーションで用いる投影ラインに近接する観測地点(最大12地点)については、3成分記録を同時に表示した(図3−4−7および図3−4−8)。前処理として加速度波形から速度波形に変換した後、帯域通過フィルター(1秒〜10秒)を施した(図3−4−9および図3−4−10)。今回使用したフィルターは、バターワース型であり、スロープは24dB/Oct、カットオフ周波数はコーナーで与えている。

観測記録の加速度フーリエスペクトルについても図3−4−11図3−4−12図3−4−13図3−4−14図3−4−15図3−4−16に図示する。加速度スペクトルは、原点時刻から60秒間で計算している。2001/9/27地震(Mj4.3)では概ね0.5Hz(2秒)、2001/2/23地震(Mj4.9)では概ね0.2Hz(5秒)以上において、ω2乗スケーリング則に合致しており、これより高周波領域でデータが有効であると考えられる。

 図3−4−17および図3−4−18には、1−10秒帯域フィルター後の水平動ピーク速度値の平面分布をコンター表示させたものである。いずれの地震も周期1秒付近に最もパワーを持つが、豊橋平野、および、岡崎平野で高い値を示しており、地域の堆積層の厚さを反映しているものと考えられる。ただし、2秒より低周波を通過させる帯域フィルターを施したピーク値分布からは、基盤深度などとの関連を見出すことはできなかった。なお、コンター作成には有限の観測点からのデータのみを使用しており、その精度については十分な考慮が必要である。

図3−4−19および図3−4−20に、各地震についてフィルター後速度波形のH/Vスペクトルを示す。これに使用する解析区間は、120秒(K−netとKiK−net)、60秒(市町村データ)とし、フィルター後の各波形のフーリエスペクトルからスペクトル比を算出した。この際、水平動のスペクトルとして、N−S成分とE−W成分の相乗平均を用いた。加速度フーリエスペクトルから判るように、一部の記録では低周波ノイズが混入しているため、その信頼できる周波数範囲は、2001/9/27地震で2秒、2001/2/23地震で5秒程度である。豊橋平野、および、岡崎平野においてやや低周期帯で高い値を示しており、地盤の卓越周期を反映しているものと考えられる。