3−1−4 岡崎平野における重力と基盤深度の関係

重力異常は広域の基盤構造の大略を知るのに用いられることが多い。

ブーゲー異常と基盤深度の関係:

図3−1−12には図3−1−11に示した解析領域内において、既存資料および反射法記録から推定された基盤深度とブーゲー異常値のクロスプロットを示した。ブーゲー異常値は平成13年度三河地域堆積平野地下構造調査の結果(愛知県,2002)のブーゲー補正密度2.0g/ccのものを用いた。この結果から、岡崎平野中西部を通る平成14年度反射法測線およびその周辺の坑井・微動アレイによる基盤深度と重力異常値の関係(図中には赤色の点線で示した)と岡崎平野南部を通る平成15年度反射法測線および岡崎平野南西部・北東部の坑井・微動アレイデータによる基盤深度と重力異常値の関係(図中には青色の点線で示した)は異なる傾向を示しているのがわかる。

いま、無限平板を考えるとその厚さyと引力xの関係は、

x=0.0419Δρ×y                (3.1.2)

で表される。ただし、

x:ブーゲー異常値(mgal)

Δρ:表層と基盤の密度差(g/cc)

y:基盤深度(m)

図3−1−12においては直線の傾きが(1/0.0419Δρ)を表しており、この傾きから、上記のΔρが推定できる。平成14年度反射法測線近傍および平成15年度反射法測線近傍のΔρはそれぞれ1.34および0.59となる。基盤の密度を2.67とすると平成14年度反射法測線での表層(堆積層)密度は1.33となりやや軽い値になる。一方、平成15年度反射法測線では、表層(堆積層)の密度は2.08となり妥当な値が得られている。平成14年度反射法測線でΔρが大きく(堆積層の密度が小さく)見積もられる原因のひとつとして、ブーゲー異常値に広域の重力トレンドが残っている可能性が考えられる。広域の重力トレンドを除去するため、平成13年度の調査で実施された上方接続(接続距離3km)による重力トレンド(図3−1−13)をブーゲー異常値から差し引いた残差重力(図3−1−14)と基盤深度の関係を図3−1−15に示した。基盤深度と残差重力の関係には、図3−1−12で指摘した地域差が残っている。図3−1−16には比較的広域のブーゲー異常図を示した。図中赤丸印には基盤上面でのブーゲー異常値を示した。これから判るように、東海地方の太平洋側では、基盤のブーゲー異常はフラットであり(正の異常、)内陸で(負に)変化する傾向が見られる。このトレンドは、岡崎北部あたりで大きく変化している。この基盤の重力異常トレンドの影響から、平成14年度反射法測線では、図3−1−12での傾きが小さくなり、見かけ上表層密度が小さく見積もられた可能性がある。図3−1−17図3−1−16に示した地点で得られた基盤上の重力異常値を用いて、基盤の重力トレンドを1次の多項式で近似した結果である。この方法では、基盤が露出している部分のデータのみを用いているので、得られた重力異常のトレンドには、堆積層の影響は含まれない。このトレンドは前述の基盤重力異常のトレンドと概ね整合している。得られたブーゲー異常値から、この重力トレンドを引き、新たに残差重力を作成した(図3−1−18)。この残差重力と基盤深度の関係を図3.1.19に示した。得られた結果は、図3−1−12および図3−1−15に比べると地域差が小さくなり、また、岡崎平野全体に単一の近似式

基盤深度(m)=−52.669×残差重力(mgal)+80.732          (3.1.3)

を適用することが可能である。また、この式から得られるΔρも0.45と妥当な値である。