(4)レイトレーシングによる地下構造の推定

レイトレーシングによる方法では、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いて、試行錯誤を繰り返し、モデリングによる走時と実記録の走時合わせを行なった。

(4−1) モデルT

入力モデルはP波反射法から求まった各境界面の深度構造を仮定したが、反射法では測線南側での基盤上面の反射が不明瞭である。このため、D層の層厚については不確定要素を含んでいる。一方、屈折法では、測線南側のショットでは、VP4の測線北側Far Offsetにのみ見かけ速度5.0km/sを超える基盤からの屈折波と考えられる初動が確認できる。また、測線北側の屈折法ショットVP504の測線南側Far Offsetに見かけ速度3.8km/s前後の基盤からの屈折波と考えられる初動が確認できる。このことから基盤の構造が測線北側から測線南側に傾斜して深くなっていることが考えられ、D層の層厚と区間速度には不確定要素が含まれているものの、得られた初動走時及び後続波を説明できる速度モデルを推定した。

屈折法から得られた速度モデルTを付図6−8−1付図6−8−2に示す。図中の+印は、速度境界深度を与えた点で、境界面はこれらの点の間で直線内挿している。また、図中の数字は各層のP波伝播速度を示し、数字が書かれている点で速度が与えられ、その間は直線内装している。このモデルは、測線全体で得られた初動走時を比較的よく説明することができるが、特に測線南側では基盤上面からと考えられる見かけ速度5.0km/s前後の屈折初動走時が十分に得られていない可能性があり、推定された構造は不確定要素が大きい。

最終速度モデルTに対するレイトレーシング結果と実データとの比較を付図6−9−1付図6−9−2付図6−9−3付図6−9−4付図6−9−5付図6−9−6付図6−9−7付図6−9−8付図6−9−9付図6−9−10付図6−9−11付図6−9−12に示す。この図は、上から(i)屈折波強調処理後の記録、(ii)観測走時と最終速度モデルに対する計算走時、(iii)最終速度モデルに対する屈折波線、を順に並べて表示したものである。各図中(A)には、(B)に示したモデルの範囲内での計算走時すべてが表示されているため、実データの無い部分にも計算走時が表示されている。(B)には実データで得られている最も遠い初動走時に対応する波線を太線で示した。

(4−2) モデルU

入力モデルはP波反射法から求まった各境界面の深度構造を仮定したが、反射法では測線南側での基盤上面の反射が不明瞭である。一方、屈折法では、測線南側の多くのショットでは見かけ速度3.2km/s前後の屈折波を確認できるが、見かけ速度5.0km/s前後の屈折波はVP4の測線北側Far Offsetにのみ確認できる。また、測線北側の屈折法ショットでは、見かけ速度5.0km/s前後の屈折波を多くのショットで確認することができる。このことから基盤の速度構造が測線の南側と北側で大きく異なる可能性も考えられる。初動走時及び後続波を説明でき、且つCDP1030(インラインオフセット6100m)付近で基盤の速度が3.2km/sから5.0km/sに変わるモデルを推定した。

屈折法から得られた速度モデルUを付図6−8−2に示す。図中の+印は、速度境界深度を与えた点で、境界面はこれらの点の間で直線内挿している。また、図中の数字は各層のP波伝播速度を示し、数字が書かれている点で速度が与えられ、その間は直線内装している。このモデルは、測線全体で得られた初動走時を概ね説明することができる。しかしながらVP4の測線北側Far Offsetでの初動走時を説明することはできない。

最終速度モデルUに対するレイトレーシング結果と実データとの比較を付図6−10−1付図6−10−2付図6−10−3付図6−10−4付図6−10−5付図6−10−6付図6−10−7付図6−10−8付図6−10−9付図6−10−10付図6−10−11付図6−10−12に示す。この図は、上から(i)屈折波強調処理後の記録、(ii)観測走時と最終速度モデルに対する計算走時、(iii)最終速度モデルに対する屈折波線、を順に並べて表示したものである。各図中(A)には、(B)に示したモデルの範囲内での計算走時すべてが表示されているため、実データの無い部分にも計算走時が表示されている。(B)には実データで得られている最も遠い初動走時に対応する波線を太線で示した。