3−1−1 岡崎平野P波反射法地震探査

図3−1−1−1にはP波反射法による深度断面図を縦:横を5:1で表示し、P波反射法速度解析で用いた5層モデルの境界面を示した(この境界面は全測線に亘って追跡可能な反射面であり、必ずしも層序区分の境界と一致しているわけではない)。 図3−1−1−2は、P波反射法による深度断面図を、縦:横を5:1でカラー表示した結果である。図中には、反射法速度解析によって得られた速度境界と区間速度を併せて示した。P波反射法によって得られたP波速度構造図を図3−1−3に示す。

これらから、反射法断面図の性状は以下のようにまとめられる。

A)基盤の形状など

先新第三系基盤上面に対応すると考えられる比較的凹凸に富む反射面が測線全体で捉えられている。その深度は、CDP1050(大府市北崎町)付近以東では、全体的に東上がりであり、CDP150(安城市横山町)付近で深度600mであり、CDP1100(大府市北崎町)付近では1000m程度に達する。また、CDP250〜CDP550付近(安城市二本木新町付近〜知立市弘法町付近)に基盤の高まりが認められる。CDP1050以西は若干不明瞭ではあるが基盤は西上がりを示す。

B)堆積層の構造など

基盤以浅の反射面も全体的には緩やかな東上がりであるが、CDP1000付近(大府市北崎町)、CDP1150付近およびCDP1350(大府市共和町)付近でその傾きが変化している。速度解析の結果、基盤以浅の堆積層のP波速度は深度と共に漸増し、1.6km/sec〜3.0km/secを示している。反射法速度解析で用いた層区分に従えば、堆積層の特徴は以下の様にまとめることが出来る。

表3−1

本測線上およびその近傍では、温泉ボーリングなどにより以下の情報が得られている。

表3−2

図3−1−1−3は、反射法深度断面図に各坑井で得られた柱状図を対比させた結果である。柱状図は沖積層〜洪積層、東海層群、中新統および基盤をそれぞれ、青、黄、緑および赤で示した。

地質図によれば、岡崎平野西部では東海層群が広く地表に分布しており、B層が地表に露出する部分は地質図と良く一致している。このことから、B層は東海層群上部に相当すると考えられる。この結果は、愛知県(1996)による活断層調査の結果と良く整合している。また、CDP250〜CDP550付近に基盤の高まりが認められるが、安城観測井においても基盤深度は350mと浅く、この高まりは南方方向に連続している可能性が高い。測線西側の長草温泉および健康の森温泉の柱状図を参照すると、D層上面は中新統の上面付近に相当するように見えるが、これらの坑井は測線からオフセットを有すること、さらに、測線東側のコロナ2号泉や基盤の高まり部の南方約4kmに位置する安城観測井においても、中新統は確認されておらず、中新統は測線の東側で尖滅している可能性が高いこと等により、D層上面は東海層群と中新統の境界ではなく、東海層群中の境界に相当すると考えられる。

以上の解釈結果をまとめると、

A層:沖積層〜洪積層

B層:東海層群(常滑層群)上部

C層:東海層群中部

D層:東海層群下部〜中新統(師崎層群)相当層

と推定される。

C)P波反射法測線中には、以下の断層系が認められている(愛知県、1996):

表3−3

反射法から推定される断層系の位置は、これまでの結果と概ね一致している。

上記以外には断層のような顕著な不連続構造を明瞭に示す事象は認められない。

これらの結果を図3−1−2に示した。