7−4 まとめ

本調査でのモデル化は、速度値と地質の関係を検討して、濃尾平野全体に展開する上で、地質境界を活用する手法を取り、現状におけるひとつの地下構造モデルを提供することができた。しかし地質境界面の推定には誤差が入り込む余地がある。また本検討で用いた地質と速度の一律の関係を適用させる方法は、濃尾平野という広い領域に対しては必ずしも適用できない可能性がある。今後さらに速度構造に関するデータが蓄積された場合には、速度層構造をベースに、各データを補間して3次元的なモデルを構築することが適当であると考えられる。

モデルの検証に関しては、まず卓越周期による検証と修正を行ったうえで、波形のシミュレーションによりモデルを検証する過程が適切であることが示された。地震動予測のための速度モデルの検証、修正のためには、可能な限り多くの地震観測地点の記録を用いることが望ましく、今後更なる地震観測地点の増加が望まれる。

今回の調査では、平野西部にある養老断層周辺の急変する地盤構造、及び物性値の深度依存性のモデル化が課題でもあった。これに関しては、一応のモデル化ができたものの、一方では、表層地盤あるいは短周期領域の重要性も指摘される。深い地盤のみならず、浅い地盤も含めた理論的な計算手法が進展しつつあるので、地震動予測のための地盤のモデル化を進め、広域もにらんだ地震防災に役立てていくことが次のステップである。