5−4 重力異常分布による検証

モデル化した密度値の妥当性ならびにモデルの3次元形状の妥当性を検証するために、観測残差重力ブーゲー異常分布と作成した地下構造モデルから計算される重力値分布との比較を行った。3次元密度モデルは東西方向1km、南北方向1km、深度方向200mのサイズの角柱でモデル化し、与えられた密度による計算範囲の地表面での重力値を計算した。各角柱の密度値は先に用いたP波速度との関係式

密度(g/cm)=1.76Vp(km/s)0.239

により与えた。

図5−4−1には基盤岩類の上面深度と重力値の関係を、観測値とモデルによる理論値で重ねて示す。重力値が小さいと基盤上面深度が深くなる傾向は観測値と理論値で同様の傾向を示しているが、若干理論値の分布がまとまっていることが分かる。これは密度設定の元となっているP波速度が地質境界面の深度に依存する関係式で濃尾平野全域共通に付与されていることが要因と考えられる。

図5−4−2−1図5−4−2−2図5−4−2−3には密度モデル断面図とその断面における観測重力値および理論重力値の比較例を示す。観測値の形状は比較的よく再現されているが、重力値の高低の振幅がY=−92000mおよびY=−104000mの断面において観測値に比べ小さく、特に濃尾平野周辺でこの傾向は顕著である。

また、図5−4−3には、観測重力値と理論重力値の平面図の比較を示す。平面図で見ても平野部中央部においては観測重力値分布と理論重力値分布の傾向は対応している。重力値の高低の振幅が小さいことに関しては、堆積層内のP波速度と密度値の対応関係について清洲地震観測井での関係を用いたが、P波速度が小さい領域で密度が一般的な関係であるLudwigによるものに比べて大きく、P波速度に対する変化が少ないことが影響しているものと考えられる。

図5−4−1 基盤上面深度と重力値の関係

図5−4−2−1 密度モデル及び観測重力値と理論重力値の比較(Y=−78000m断面)

図5−4−2−2 密度モデル及び観測重力値と理論重力値の比較(Y=−92000m断面)

図5−4−2−3 密度モデル及び観測重力値と理論重力値の比較(Y=−104000m断面)

図5−4−3 観測重力分布(上)と修正地下構造モデルによる理論重力分布(下)