3−7−3 愛知県設計用入力地震動研究協議会(2002)によるモデルと地震動計算結果

愛知県設計用入力地震動研究協議会(2002)(以下「協議会」と略称する)は、重力異常分布に基づく3層(第四紀層、第三紀層及び基盤岩類に相当するとしている)の密度構造モデル(前出の図3−4−11図3−4−12参照)をベースにして、平成11〜12年度に実施された反射法探査(前出図3−4−6)に示された各層の区間速度を用いて、各層に速度値を与えている。その際、第四紀層、第三紀層の速度の深度依存性を考慮している。すなわち、各層についてそれぞれ間隙率を介した深度とP波速度の回帰式を、土質力学を参考にした関係(P波速度がおおよそ上載圧(深度)の1/6乗に比例する)を念頭において、反射法による区間速度(愛知県(2001))の回帰により求めている。

第四紀層:Vp(km/s)0.811 Z0.158

第三紀層Vp=a Z 1/6 (αΦ+β)=0.204 Z1/6+ 0.756 Z1/6

第三紀層の回帰式では地表からの上載圧をZ1/6(Zは深度)で考慮し、さらに第三紀層内固有の補正を一次式 (αΦ+β)で表している。

Q値に関しては、堆積層に対してはQ=100とし、格子間隔は125m、S波速度の最低値は0.4km/sとしている。

図3−6−3に協議会によるモデルの速度境界の分布を示す。このモデルは、限られたデータを用いて密度境界(あるいは地質境界)をベースとして、平野全体に展開していくための手法として参考になる。ただし、反射法探査による区間速度に対して、区間の中央の深度を採っているので、区間が長い場合には速度値を遅めに見積もっている可能性がある。また、第三紀層をまとめているが東海層群と中新統では性格が異なる可能性がある。

さらに、協議会では、この地盤モデルを用いて差分法による地震動の計算をしている。その一例を図3−6−4に示す。1998年4月22日に岐阜県美濃中西部で発生したM=5.4の地震によるものである。その結果は、後続位相を含めて位相と振幅がよく対応している。

図3−6−3 地質(密度)境界の深度分布

図3−6−4 3次元有限差分法による計算波と観測波の比較