(5)レイトレーシングによる地下構造の推定

レイトレーシングによる方法では、岩崎(1988)による波線追跡プログラムを用いて、試行錯誤を繰り返し、モデリングによる走時と実記録の走時合わせを行なった。

入力モデルは、タイムターム法によって得られた基盤構造とP波反射法地震探査から得られた深度断面による基盤構造が比較的良く一致していること、タイムターム法では養老断層付近の構造の推定が困難であったこと等を考慮して、反射法から求まった各境界面の深度構造(図2−2−15)を仮定して、各層の区間速度のみを変化させ、最もモデルと観測値の走時のずれが少ない速度モデルを最終的なモデル(図2−3−7 )とした。養老断層から東側は、反射法で推定した5層構造を仮定した。

この最終速度モデルを図2−3−7に示す。図中の▽印は、反射法結果による速度境界深度を与えた点で、境界面はこれらの点の間で直線内挿している。また、図中の数字は各層のP波伝播速度を示し、数字が書かれている点で速度が与えられ、その間は直線内装している。このモデルでは、表層構造は無視している。基盤岩の速度は、タイムターム法の結果を初期値とした。

最終速度モデルに対するレイトレーシング結果と実データとの比較を図2−3−8−1図2−3−8−2図2−3−8−3図2−3−8−4図2−3−8−5図2−3−8−6図2−3−8−7に示す。この図は、上から(i)屈折波強調処理後の記録、(ii)観測走時と最終速度モデルに対する計算走時、(iii)最終速度モデルに対する屈折波線、を順に並べて表示したものである。