(3)仮想測線へのデータの投影

今回の屈折法測線は、全体的には直線に近いもののやや屈曲している。この様な場合は、一直線上に発震点・受振点が並んでいることを想定している屈折波解析手法をそのまま適用できない。そのため、直線状の仮想測線への投影が必要になる。以下にその手法を述べる。

 まず、図2−3−3のように、受振測線が曲がっており、発震点も受振測線からオフセットがあるものとする。次に、仮想測線を選ぶ。今年度の測線では発震点R1とR5を結ぶ直線で設定した。

 この仮想測線上に発震点位置・受振点位置を投影する。発震点−受振点間の直線と投影された直線のなす角度をθとすると、実オフセット距離(X)と投影された距離(X')との関係は、

  X'=Xcosθ

となる。これに対して、読み取った初動走時の補正(T)を行なう。表層付近の屈折波でオフセット距離が短い場合は、インターセプトタイム(T0)が0と見なせるので、補正された初動走時(T')は、

 T'=Tcosθ

となる。インターセプトタイムが0と見なせないような第2層以下の屈折波初動(T)については、

 T'=(T−T)cosθ+T

として補正を行なう。ただし、cosθが0.99以上であれば、実用上補正は不要と考えられ、第2層以下についてこの補正が必要なケースは希である。

読みとった初動を投影した走時曲線を図2−3−4 に示す。これには、初動の見掛け速度が示してある。基盤からの屈折波と思われる初動の見掛け速度は、各震源の西側では5000m/sec前後、震源の東側では6000m/sec前後を示している。これは西落ちの基盤構造を反映していると考えられる。また、発震R2、R3、R4に対する測線西端部では標高が高いにもかかわらず初動走時が早いという異常が見られるが、これは養老断層により測線西端で基盤が地表付近に存在するためと類推される。付録2には投影後の初動走時を示した。