2−1−9 既存資料による調査地域の基盤構造

調査地域の地震基盤に相当すると考えられる中古生層や花崗岩上面の深度分布を推定するために最も精度の高い既存資料は深層ボーリングデータであるが、調査地域内で基盤まで達する坑井は非常に少ない。この間を埋めるデータとしてはブーゲー重力異常や反射法データが挙げられる。

ブーゲー重力異常から、堆積層と基盤の2層モデルを仮定して、それぞれの密度が一定として基盤深度を推定することができる。図2−1−6に示す飯田・青木(1959)の結果は、堆積層の密度は2.0、基盤の密度は2.4として推定した基盤深度である。

反射法データから基盤深度を推定するには、厳密にはボーリングデータと対応付けを行う必要があるが、反射法測線近傍には基盤まで達する坑井はほとんどない。そのため、反射法データから単独で推定された基盤深度の精度には注意を要する。ただし、基盤深度に関する情報の乏しい現状では重要なデータである。

以上の既存資料を図2−1−21に同時に表示した。これによれば、重力データから推定された基盤深度はボーリングや反射法データと比べてかなり大きく推定されている。この差は名古屋市では100〜200m程度であるが、西方や北方に向かうに連れて大きくなり、海津町揖斐川付近では1000mにも達する。この原因としては、濃尾平野全域で単一の密度仮定を採用したことや、堆積層と基盤という全域で均一な2層仮定を用いたこと等が考えられる。ボーリングデータでは、調査地域で確認される基盤には花崗岩と中・古生層の2種類が存在し、沖積層の層厚も場所によっては大きく変化するため、これらの分布状況が重力データから推定される基盤深度に影響を与える可能性がある。

このように重力データから推定される基盤深度は、その絶対値に問題があるものの、2点間の基盤深度の変化を類推するデータとしては、現有する資料の中では最もデータ密度が高い資料である。そこで、ボーリングデータ及び反射法データから推定される基盤深度をブーゲー重力異常から推定される基盤深度コンターをもとに外挿したものが図2−1−21中の赤い点線である。これによれば、基盤深度は東北東から西南西に向かって深くなり岐阜県南濃町付近で深度2000mを越える。また、名古屋市南西部で西方に基盤深度が急激に大きくなっている。さらに、名古屋市北方から美和町付近にかけての地域の北側と南側の基盤の等深度線にはギャップが存在する。重力トレンドに比べより北西方向のトレンドでスムーズに接続するか、あるいは階段状に接続するのか、既存資料のみからは断定できない。

基盤構造モデルは、今後、本調査で実施されたあるいは今後実施される長大測線における反射法から推定される基盤深度とブーゲー異常との関係を、ボーリングデータを較正データとして使用しながら求め、この関係をもとにブーゲー異常を基盤深度に変換することにより、より広域にかつ精度の高いモデルに改善されうるものと考えられる。