2−1−6 深部反射法地震探査

図2−1−16に濃尾平野周辺において基盤までを対象として実施された深部反射法地震探査位置を示す。以下にそれらの概要をまとめる。

一宮市及び木曽川町周辺(平成9年度「尾張西部活断層調査」(愛知県, 1998))

一宮市南部の約7kmの東西測線と木曽川町での約3kmの東西方向の測線から成る。いずれの測線でも西に傾斜する傾動構造が捉えられ、基盤までの反射面が捉えられた。一宮測線では、基盤深度は東から西に深くなり、約500m〜850mを示し、木曽川町測線では同様に、約500m〜650mを示している。これらの測線は岐阜−一宮線の推定位置を横切ると考えられたが、これらの断面では基盤上面に凹凸は認められるものの、大きな上下方向の累積変位を示す断層は確認できなかった。

(2)岐阜県海津町及び南濃町(須貝・杉山, 1998)

海津町から南濃町に至る東西約7kmと木曾川沿いの南北約3kmの測線から成る。いずれの測線も基盤までの反射面が明瞭に捉えられている。東西測線では西縁の養老断層に向かって傾斜する傾動構造が発達することが確認され、養老断層が低角の逆断層であることが確かめられ、その前縁は揖斐川西岸に達することが確認された。基盤上面は東西測線東端で深度約1300mで西方に傾斜し、断層から約1.5km東で深度約2000mに達する。これ以西では反射面は存在するものの基盤上面の確認が難しい。浅部の堆積層の境界面の連続性は極めて良く、調査地近傍に推定されている大藪−津島線、大垣−今尾線の兆候は一切認められなかった。

(3)三重県桑名市及び長島町の長良川河口部(水資源開発公団ほか, 1994)

伊勢大橋付近の桑名断層系を東西に横切る約5kmの測線とこれに交差し、長良川と揖斐川の間の中堤沿いの約5kmの測線での反射法調査である。基盤上面までの反射面が明瞭に捉えられている。基盤上面は、濃尾平野下では深度1700〜1800mで平坦ないしは南西方向に緩やかに傾斜し、桑名断層系によりその西側では深度700mに上昇している。堆積層は成層構造を成し連続性が非常に良いことが特徴的である。深層ボーリング資料から中新統と解釈された地層は基盤の凹凸を埋めるように堆積し、上位の東海層群と不整合を成しており、その層厚は200m程度である。これに相当するものは桑名断層西側では認められない。断層東側の東海層群以浅の堆積層は緩やかな西傾斜で層厚も西方に大きくなっている。

(4)三重県多度町(戸田ほか, 1997)

養老山地の山麓線の南方延長部をほぼ東西に横切り、東端は濃尾平野から西端は多度丘陵にかかる約2.8kmの測線での反射法調査である。東海層群基底付近までの反射面が捉えられ、養老断層が撓曲構造を伴う逆断層であることが確認された。その活動開始時期や平均変位速度等が推定された。さらに、市之原断層の性状についても明らかにされた。本調査では、震源エネルギ−の問題から中新統や基盤等の深部構造については捉えられていない。

(5)伊勢湾(水資源開発公団ほか, 1994)

基盤まで非常に明瞭な記録であり、伊勢湾断層が全東西測線ではっきりと追跡できる。最も北側に位置する東西測線の基盤深度は伊勢湾断層の西側で約2300m、東側で約1400mを示している。基盤上面を含み中新統上面までは緩やかな西傾斜を示しているが、それ以浅はほとんど平坦である。中新統の層厚は500m程度である。また、各地層とも南北方向にはほぼ平坦である。