6−2−2 その他の地点の地下構造

5章においては、重力データ、ボーリングデータ等の既存資料と今回の微動アレー探査結果から、三河地域の3次元地下構造モデルを推定した。その結果、岡崎平野では基盤深度は最大で0.8km程度で、概して西部で深く東方向に浅くなる傾向にあること、豊橋平野では最大でも0.5km程度と浅いこと等が推定された。ここでは、O−3地点とAICH04地点ほど近接してはいないが、微動アレー探査地点付近のいくつかの地震観測点での地震観測記録により、3次元地下構造モデル(基盤深度分布)について若干の検討を行った。

対象とした地震観測点は、岡崎平野ではO−3地点の南西方向のAIC012(安城)観測点、O−2地点の北方やや東寄りのAIC009(豊田)観測点、豊橋平野のT−3地点の北東にあるAIC015(豊橋)観測点である(図6−2−1参照)。一方、用いた地震は、長周期成分が顕著に認められたEQ−1である。各観測点の観測記録(水平2成分)を絶対時刻を合わせて図6−2−9に示す。同図には、比較としてAICH04(地表:GL−0)の記録も示してある。解析は前節同様、FFT解析により水平2成分のS波主要動部分約40秒間の記録(赤枠で囲まれた部分)のフーリエスペクトル(位相を考慮した合成フーリエ振幅)を求めた。得られた各観測点のフーリスペクトルを図6−2−10の上図に示す。

各観測点での最も長周期側の卓越周期は、安城(AIC012)でAICH04と同様2秒程度、豊田(AIC009)で0.9〜1.0秒、豊橋(AIC015)で約1.5秒となっている。一方、各地震観測点付近の微動アレー探査地点O−3、O−2、T−3地点での探査結果によるS波速度構造に基づくS波の理論増幅特性は、図6−2−10の下図に示すとおりである。各地点での微動アレー探査結果による基盤深度とS波の理論増幅特性の1次のピーク周期は、O−3地点で395mと2.2秒程度、O−2地点で273mと約1.1秒、T−3地点で244mと1.3秒程度となっている。

AIC012観測点における地震記録の長周期での2.0〜2.2秒の卓越周期は、O−3地点の増幅特性の1次ピーク周期とほぼ同周期となっている。このことは、O−3地点から3km程度の距離にあるAIC012観測点の基盤深度が、3次元地下構造モデルから、O−3地点とほぼ同程度の413mと推定されていることと調和的である。

3次元地下構造モデルでは、O−2地点から東および北方向へ向かって基盤深度が急激に浅くなる構造となっており、O−2地点から北方やや東寄り約8kmの位置にあるAIC009観測点での基盤深度は186mと、O−2地点に比べ有意に浅い深度が推定されている。このような構造は、AIC009観測点の地震記録で、0.9〜1.0秒が最も長周期の卓越周期であり、O−2地点の増幅特性の1次ピーク周期に比べ明らかに短くなっていることからも示唆される。

一方、豊橋平野内のAIC015観測点はT−3地点から3km程度の位置にあり、基盤深度はT−3地点と同程度の239mと推定されている。図6−2−10によれば、AIC015地点の地震記録のスペクトルでの長周期の卓越周期は約1.4秒、T−3地点の増幅特性の1次ピーク周期は約1.3秒である。両者の値はほぼ同程度であり、推定された地下構造と調和的な結果と考えられる。

以上の検討結果から、今回求めた地下構造モデルは、検証例が少なく十分とは言い難いが、調査地域内の地震動特性をある程度説明することが可能であり、概ね妥当なものであると考えられる。