(1)解析方法

位相速度の解析には、空間自己相関法(SPAC法)を用いた。この方法は、

・微動は定常確率過程である。

・レーリー波は基本モードが卓越している。

という仮定のもとに、円形(通常は正三角形で代用)に配置した地震計で同時観測した微動記録の相関から、位相速度を求める解析手法である。

解析は、地震計間距離が等しいグループごとに行われる。同心の2重正三角形配置で観測を行えば、地震計間距離(これを、単純に距離、半径、あるいは等価半径と呼ぶことがある)が等しいグループが基本的に5つでき、それぞれにおいて、規格化した空間自己相関関数を方位平均して空間自己相関係数が求められる。空間自己相関係数は第一種0次のベッセル関数で表されるため、式4.4.1により地震計間距離ごとに周波数fに対応した位相速度c(f)が求められる。解析できる周波数の範囲は、地震計間距離によって相対的に変化する。

ρ(f,r)=J(2πfr/c(f))  ・・・・・・ (4.4.1 )

ρ : 空間自己相関係数

f : 周波数

r : 地震計間距離(半径)

: 第一種0次ベッセル関数

c(f): 位相速度

各調査地点のアレーサイズごとのパワースペクトル、空間自己相関係数、および分散曲線を付図4−26付図4−27付図4−28付図4−29付図4−30付図4−31付図4−32付図4−33付図4−34付図4−35付図4−36付図4−37に示し、代表例としてO−3地点の結果を図4−4−2に、T−3地点の結果を図4−4−3に示す。また、アレーサイズごとの分散曲線を統合した各調査地点の観測分散曲線を図4−4−4に示す。

図4−4−4−1 空間自己相関法による解析の流れ