4−1 微動アレー探査の概要

微動とは、風雨や波浪などの自然現象や、工場や交通振動など人間の日常活動に起因する地盤の微小な振動を指す。微動は常に観測することができる。

地表面で観測される微動は、実体波も含まれるが、表面波が主体となっていると考えられる。表面波には幅広い周期(周波数)帯域の波が含まれており、周期によって伝播速度が異なる『分散』と呼ばれる特性を持っている。それぞれの周期における表面波の伝播速度を、『位相速度』という。各周期の位相速度値(これを順番に並べたものを分散曲線と呼ぶ)は、地盤のS波速度構造によってほぼ決定される。また、水平多層構造モデルに各層のS波速度を与えることにより、分散曲線を理論的に求めることができる。微動アレー探査は、調査地点における分散曲線を求めることにより、地盤のS波速度構造を推定する探査手法である。

表面波にはレーリー波とラヴ波とがあるが、微動アレー探査では微動の上下動成分を観測しレーリー波の分散を求めるのが一般的であり、本調査もこの方法を採用した。

表面波の分散曲線を求めるためには、地震計を面的に複数配置した(アレー配置)観測網で、同時に微動を観測する必要がある。これによって求められる分散は、地震計を配置した調査地域(以下、この地域を微動アレー探査の調査地点と呼ぶ)近傍の、平均的なS波速度構造を反映したものとなる。したがってこの分散曲線から推定されるS波速度構造も、調査地点近傍の平均的なものとなる。

微動アレー探査は、次の3つの手順に分けることができる。

@微動を観測する。

地震計を地表面にアレー配置し、各観測点での微動を同時観測する。

A調査地点の分散曲線を求める。

それぞれの周期成分の、観測点間の相関性により、分散曲線を求める。

(以下、この分散曲線を『観測分散曲線』と呼ぶ。)

BS波速度構造を推定する。

水平多層構造モデルから理論的に求められる分散曲線(以下、これを『理論分散曲線』と呼ぶ)が、Aの観測分散曲線とほぼ一致するモデルを、逆解析により求める。